2. 造舶Webプロジェクトの狙いと概要
この2章では、本プロジェクト(舶用機器の設計・技術情報の交換の高度化に関する開発研究;通称「造舶Web」)を起案し実施するに至った経緯・目的と3ヶ年計画で実施された本プロジェクト実施内容の概要について述べる。
2.1 プロジェクト起案の背景
国際競争力強化のための方策の一つとして、企業の枠を越えた協業・分業を最新のIT (Information Technology)を活用して早期に実現することが過去数年来提案されてきた。それは例えば、関係事業者・組織間で交換すべき各種情報の標準化・電子化を推進し、その交換効率を飛躍的に向上させることにより、それぞれ得意分野に特化した各企業がVE (Virtual Enterprise)を形成し全体として高い競争力を有する企業活動を展開すべきといったものである。また、このVEを包含したより広い概念として、最近ではSCM (Supply Chain Management)という言葉も昨今よく聞かれるようになった。すなわち、自社への供給業者に対する原材料・部品・製品の更なる供給業者、また、自社の顧客の顧客という形で、川上の最上流から川下の最後(最終ユーザ)まで途切れることない企業の連鎖がサプライチェーンであるが、従来一つの企業が持っていた計画、資源調達、製造、販売というビジネスプロセスを、連携する複数の企業が一体となり、あたかも一つの企業のような企業連合体(これもVEと言えよう)として最高品質の製品やサービスの提供を最低コストで行うといった考え方がSCMにはあり、企業連鎖の一構成員である自社にとっても、また他の構成員である協力会社(パートナー)にとっても、そして顧客にとっても、相互にメリットが得られるようにこの企業連鎖の活動全体の最適化を目指すことがSCMの目指すところとされている。
図2-1(Ref.1)は、取引関係のある企業間における、対立関係からパートナーシップへ、というSCMのキーワードの一つを説明するためのものであって、本図が言わんとしていることは文字通り対立から協調関係への転換による両方のメリットの追求ということであろう(これを「WIN-LOSE」から「WIN-WIN」への転換といっている)。