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原因は骨材部の強度不足と考える。この船は、建造後初めて魚倉の内張りを剥いだので、いつ折損が発生したかは不明である。折損部は、船首から1/4Lの付近で発生しており、スラミングによる損傷の兆候も示している。

 

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写真2 内部骨材の折損

 

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写真3 内部骨材の折損(拡大)

 

二、舵・シューピースの脱落事故

舵軸の径の算出に使用する計算式は、一般に速度の二乗に比例する。このためエンジンが高速になると当然舵軸を太くする必要がある。しかし、機関換装をしても船尾周りまで取り替えることはなかなかできないため、舵やシューピースが損傷する事故が起きる。その事故事例を次に述べる。

写真4 舵、シューピース脱落事故

この事故は、舵軸上部フランジの付け根が折損し、そのために受けていたシューピースが捻(ね)じれて脱落した事故である。原因は、舵軸が細いにもかかわらず高速で走行した結果、応力に耐えられず折損したと思われる。

 

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写真4 舵、シューピースの脱落

 

写真5 フランジ式舵の折損事故

この事故は、舵軸がフランジ下二〇cmのところで折損したものである。破断面をみると明らかに疲労折損の形跡がみてとれる。原因は舵軸にかかる繰り返し応力に対し舵軸が耐えきれず亀裂が発生し、その後徐々に亀裂が進行し遂に破損し舵が脱落したと思われる。

 

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写真5 舵軸の折損

 

写真6 舵板脱落事故

この事故は、ステンレス製の舵がフランジ下の舵軸部で折損し舵板が脱落したものである。原因は写真からも明らかなように、舵軸が細すぎたことによるものと思われる。

 

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写真6 舵の脱落

 

三、衝突事故

漁船保険における船舶間の衝突事故件数の推移を表2に示す。各年の事故件数は一、八〇〇件から二、一〇〇件の間で推移しており、平成五年度以前も概ね二、〇〇〇件前後で推移しており、漁船の運航上の特殊性もあり、関係各位の事故防止の努力にもかかわらず事故が減少する傾向にない。そこで、漁船の高速化がもたらした漁船同士の衝突事故を紹介する。

 

衝突事故事例

この事故は、船外機漁船同上の事故であった。A丸(〇・九トン、六〇馬力(二機))、B丸(〇・八トン、六〇馬力(二機))とも昆布採取漁業従事漁船で、操業開始の合図とともに出港した。A丸は、一回目の操業を終え水揚げのため帰港中であり、B丸は、一回目の水揚げを終え二回目の操業のため漁場を航行中であった。

 

 

 

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