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漁船の事故事例からもそのことが立証されているので次にその点について考えてみたいと思う。

 

漁船の事故事例にみる高速化の問題点

一、FRP漁船の剥離(はくり)事故

現在の漁船勢力の状況をみてみると漁船数の約九〇%がFRP漁船である。このことからまずFRP漁船の問題点について述べる。

FRPは、その性質から強さは鋼材の三分の一、変形のしやすさは三〇倍となっており、波浪外力に対して船体はさまざまの変形を繰り返す。

このことから、FRPの外板や骨材がその積層の接着面で剥(は)がれてしまう「剥離」という現象が起きる。この現象が通常の運航中に発生したものを「剥離事故」という。

通常運航中に受ける波浪外力に対して、高速半滑走状態で走行する小型漁船の場合、船底衝撃水圧に対する局部強度を満足すれば、縦強度は問題ないといわれている。この衝撃水圧は速度の二乗に比例するので、速力が高速になればなるほど船体が受ける力は強くなる。

このことから、次のような事故が発生する。

 

漁船の剥離事故事例

写真1 外板の剥難事故

この事故は、航行中右舷外板が中央部で剥離した事故である。原因は、長期の撓み応力によるFRP積層面の接着力不足により、剥離したものであり、内部骨材の強度不足があったと推定できる。

 

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写真1 外板の剥離

 

写真2・3 内部骨材の折損

これは、魚倉内に浸水があったために魚倉内張りを剥がして船底内部を確認したところ肋骨と縦通材の交差部分が広範囲にわたり折損していた。長期間にわたり使用してたため骨材部が疲労折損に至ったと推定できる。

 

 

 

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