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小型漁船の高速化に伴う漁船事故事例について

 

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漁船保険中央会

保険業務部次長 小峰良一(こみねりょういち)

 

漁船保険における最近の引受と事故の関係については、平成九年度において、加入隻数は二四三、三二九隻、事故件数は六七、六三六件であった。漁船保険の加入隻数は、昭和六十二年度の二五五、二五二隻をピークに年々減少を続けている。

漁船保険のすう勢としては、漁船数の減少、船齢の高齢化、漁業者の高齢化等漁業界の諸問題を背景に厳しい環境をそのまま反映した状況にある。

そのなかで、最近の事故事例を分析し、小型漁船の高速化による問題点を考えてみる。

表1に昭和五十一年度から平成九年度まで二十一年間にわたる漁船保険の事故の推移をまとめてみた。項目としては、引受隻数、事故件数、保険金、一件当りの保険金、事故率を載せた。

 

表1 漁船保険の支払保険金の推移

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事故率

事故率(事故件数/引受隻数)は、最高三五%、最低二七%で、八%の範囲で推移している。このことから事故率については、隻数の減少、船齢の高齢化の影響は少ないと判断する。事故率が安定していることは、良いことではないと思うが漁業という悪条件のなかの産業では漁船事故の歯止めはなかなかかからないのが現状であると考える。

 

一件当り保険金

一件当りの保険金は、昭和五十年代当初は二〇万円前後の支払であったが、その後上昇を続け平成四年度に三〇万円を超えた。一件当り保険金の額の上昇は歯止めがかからない状況にある。ここで、注目すべきことは、事故件数が昭和六十年度の八六、三七五件をピークに年々減少を続け、平成九年度は六七、六三六件と一八、七三九件減少している。(約二二%減)

このことは、関係各位の事故防止に対する努力の結果として評価される。しかし、一件当り保険金の額の上昇をみると、年々一件ごとの修理費は年々上昇しており漁船保険の収支を圧迫している。

以下、漁船の高速化がもたらした種々の問題点について検証する。

 

漁船の高速化に伴う問題点

一、漁船の高速化の現状

漁船に搭載するエンジンについては、昭和五十七年に漁船法馬力数の算定式が改正され、近年の技術革新の結果、特に総トン数二〇トン以下の漁船に搭載されるエンジンは、ロングストローク化、高可転化、高過吸化等により出力が増大している。

また、平成九年に、それまでの気筒直径をべースとした算定式から総排気量をベースとした算定式への改正があった。これにより、最適ボア/ストローク比の採用が可能になったことから、近い将来高出力のエンジンの登場が予測される。

 

 

 

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