私としては、メーカーには常時着用型救命衣のさらなる改良の努力をしていただくこと、国にはこれらのものを実証試験などを行って認定することおよび常時着用化を担保する何等かの手法の採用を強く望んでいます。
なお、私は現行法に定めのあるプレジャーボート等の小型船舶用救命胴衣と同じ土俵での統一化を図れば市場拡大、内外メーカーの競争による救命衣の低廉化、多彩化が期待できると思っています。
また、海洋レジャー用で求められるファッション性ほどではないにしても漁業者の方も「カッコウよく」行きませんか。
「俺達仲間!」の一体感を抱かせる手法として漁協名、ロゴマークを付すなどは有効と思います。試しにどこかの漁協でメーカーの協力(サービス?)を得て格好よいベストを揃えてみませんか。
(2) 118番と携帯電話の活用
陸上で急速進展している携帯電話の普及が漁船でも進んでいます。特に本年五月一日から海上保安庁に電話緊急連絡番号「118番」が開設されたことと相まって、海上での携帯電話の有用性が増し、さらにその普及、有効活用が急速に進むものと思われ、海上における緊急連絡手段としても使用者側からの期待度は高まっています。
海難分析でも漁船海難のほとんどは沿岸から一二カイリ以内の海域で発生しており、また通信手段を有しない小型漁船の操業海域はそれよりも沿岸部であることから、携帯電話は後者にとっては唯一の連絡手段として、また前者にとっても沿岸部での漁業無線が使えないような緊急事態での連絡手段として極めて有用なものと言えます。
しかし現用のものは陸上での使用を想定したものであり、海上での緊急事態での使用にはその目的を達し難い場合があります。海上での使用に適したエリア整備、器機の開発が必要であると考えます。
通話可能エリアの拡大、不感地帯の解消などが望まれるところで、私も声を大にして意見を言っていますが、沿岸漁業関係者の要望の声の高まりも必要と思っています。
もう一つ私が声を大にして唱えているのは、救命衣の常時着用とセットの携帯電話の常時携行です。携帯電話を防水化し、救命衣のポケット(脱落防止の紐付き)に入れられるようにすれば、自然に救命衣は常時着用されるようになるでしよう。
そうすれば海中転落などの突発的事故時にも、「浮いて」「助けを呼ぶ」ことができることで、大雑ぱですが現在の死亡・行方不明者の数一〇%以上の人の命を救えるのではないかとさえ思っています。
おわりに
漁船の安全確保は、最終的には漁船員自身の自覚と実行に集約されるので、漁船員に対する指導、啓発が不可欠です。その実効を上げるためには各漁協を核とした自分達の安全に責任をもった管理体制を作り上げることが肝要です。
全漁連が唱えている“漁協ぐるみ”の思想です。
さらには、私達関係団体、関係機関の連携による取り組みも重要な要素です。力を合わせましょう。
ここで、私が安全講習会で漁協を訪れた時に感じたことからの発想について述べたいと思います。
はたして漁船の安全確保に役立ついろいろな情報はどの程度漁協や肝心の漁船員その人達に伝わっているのでしょうか。
みたところ現在の漁協の体制では、これらの情報や資料を集め、整理し、組合員に伝えるには限界があるように思えます。
そこで、「安全情報ボランティア」(仮称)構想です。
海上保安本部や海上保安部などの「安全情報の拠点」から常時海難情報・安全対策情報を出していただき、それを若干整理して「メールなどで担当エリアの各漁協に流す」ことがその役割です。
漁協では安全担当者がそれを「漁協だより」などに入れて各組合員に配布することにすれば、いろいろな安全情報が適時に各家庭、各人まで伝えることができ、非常に有効であると思います。
私達も、経験を生かした、やりがいのある人生の延長としてお手伝いができそうです。