昭和62年浅間神社の西側に隣接して、湧玉池の南西約180mのところで富士宮市立図書館の建設工事がおこなわれ、地表から8m掘削し、厚さ1mの粘土質火山灰層をはぎ取って下位の溶岩中に掘り下げたところ、溶岩中から地下水が多量に湧出した。ポンプで4万トン/日の揚水をしたところ、湧玉池上池の水位が急激に30cmほど低下した。ポンプによる排水を停止したところ、工事現場はプールとなり、水位は湧玉池より66cm高いところで安定した。その結果、湧玉池の水位も回復した。湧玉池の標高115mに対し、工事現場の溶岩上面の標高は111mと4m低い下流川に位置する。
湧玉池の湧水量は、昭和30年代には日量40万トンあったが、近年では20万トンに減少している。
地下水の水質は
富士山の南西部で地下水のヘキサダイアグラムを描くとCa2+、HCO3-の多い特徴を持つ。
トリチウム濃度
ボーリング地下20m(富士宮溶岩) 7.1±0.2T.U.(1988-9-2採水)
湧玉池上池 6.2±0.2T.U(1988-10-19採水)
安定同位体
δ18O濃度
湧玉池 -8.3パーミル 1988-10-19採水
淀師 -8.8
富士フィルム -9.2
よしま池 -9.5
潤井川 -9.1
中部日本の平野における降水の酸素同位体比は-6.5パーミルといわれ、一般に高さ100mごとに0.2パーミルほど軽くなるといわれるので、単純に計算すると標高1,000m程のところの降水ということができる。また、トリチウム濃度6.2±0.2T.Uからから大部分の地下水は、数年前の地下水とみることもできる。溶岩の空隙を満たした地下水が被圧地下水としてゆっくり流下し、上流からの圧力で押し出されるように湧出していることが分かる。
6 富士山西斜面の地下水
富士山頂〜大室山〜龍ガ岳と山頂〜天母(あんも)山との間を西斜面とする。
この中央には山頂から大沢にいたる侵食谷とその扇状地堆積物があり、その先に標高720mの猪の頭の湧泉に源を発する芝川がある。それ以外は火山砂礫と溶岩に覆われた原野である。
古富士火山の泥流堆積物は難透水層で、静岡、山梨県境の菖蒲、三ヵ水の湧水付近では植物化石が見つかっているので地下浅く分布し、田貫湖、白糸の滝の周辺で地表に広く露出している。