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工場ではポーリングをして厚さ10数mの砂礫層の下の溶岩流の割れ目に湧泉源の地下水を突き止め、利用している。

富士宮市域について簡単な水収支計算がおこなわれている。富士宮市域内の年平均降水量2,264mmとすると市域全体314km2の日降水量は192万トンとなり、蒸発散量を日量46万トン(24%)とすると、この地域の地下水、表流水の合計は146万トン計算される。富士山斜面では降水時以外は殆ど表流水はみられないから、146万トンは地下水と考えられる。富士宮市域内の湧水の合計は富士宮市の資料では146万トンとされ、降水による涵養量とほぼ一致する。

 

(1) 富士登山道2合目湧水

富士宮市の富士登山道2合目には湧水(標高1,595m)がある。

 

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2合目湧水の溶存物質が少ない。標高1,000mの天照社敷地内のトンネルにおける地下水の観察結果と考えあわせると、地下での滞留時間が短いとみられる。しかし、2合目湧水のトリチウム濃度は3.7±0.2T.Uで、濃度は低い。山頂付近の降水のトリチウム濃度は2.5±0.2T.U、銀名水は3.3±0.2T.Uなど、山体上部の水のトリチウム濃度は低いことが報告されている。トリチウムの高度効果を考える必要がある。

 

(2) 湧玉池

富士宮市の浅間神社は富士山の噴火を鎮めるために祀られた全国1300カ所ある浅間神社の総本宮で、奥宮は富士山山頂に祀られている。

富士山に登る信者は浅間神社の湧玉池で身を清めたといわれる。

湧玉池は、上池と下池があり、上池のすぐ北に新富士山火山活動旧期の富士宮溶岩が露出する丘があり、ここから地下水が湧出している。池より17mほど高い丘の上で深さ40mボーリングがおこなわれた。ボーリングで地表から深さ28.4mまで富士宮溶岩が分布し、溶岩の基底部に厚さ10cmほどのロームを挟み、その下は深さ40mの孔底まで古富士泥流が続いた。富士宮溶岩層は7層の溶岩流単層に区分された。

ボーリング孔内の地下水位は地表面下15.7m(標高118.4m)で、湧玉池水面より1.75m高く、微流速計による調査では溶岩層中には大きく3箇所で流れが検出された。地下水の流れは上方から、深さ16〜21mまでのクリンカーおよび破砕部分、深さ25〜28mのクリンカー部分、28.4mの古富士泥流との境界部分で、古富士泥流との境界部分からは地下水の湧出がみられた。浅間神社の背後一帯に広がる万野原扇状地の地下には富士宮溶岩流が分布し、溶岩中の地下水が湧玉池に湧出している。湧出水の水温は、年間を通してほぼ14℃で、一定している。

湧玉池の上池では水位観測が行われている。

毎年5月頃、湧玉池の水位はゆっくり上昇をはじめ.10月頃まで上昇を続け、11月頃、年1回のピークを示す。三島市の小浜池は4月頃から水位が上昇するが、8月に一時水位低下が起こり、再び9月から水位上昇し、10〜11月頃再びピークとなり、年2回の極大を示すのに較べ、年1回のピークしか示さない湧玉池の湧水は涵養地域から離れた地下水の水位変化あるいは深層地下水の水位変化の様相を示す。

 

 

 

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