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(3) 氾濫許容型治水の提案 ―溢れても安全な治水をもとめて―

河道主義治水の限界は、建設省も20年以上前から認識しており、以下のように氾濫・遊水を許容する施策をすでに実施してきたが、現在までその十分な展開は見ていない。

1] 1977年6月 総合治水対策

―都市の中小河川を対象に雨水の貯留・遊水を進め、流出率の抑制に努める。

2] 1987年3月 超過洪水対策

―利根川・荒川・淀川など都市の大河川を対象に、溢れても破堤しないスーパー堤防を築造する。

3] 1997年6月 河川法の改正

―河川環境の保全、整備計画策定への住民参加、樹林帯の導入などを規定した。

1997年の河川法の改正では、伝統的治水策であった水害防備林が「樹林帯」として河川施設を規定する第3条に条文化され、樹林帯と堤防のシステムで越流しても破堤させない方法の導入が可能になった。しかし、現在、まだ樹林帯を積極的に整備するという治水計画は登場していない。

そこで、現在すでに完成している治水施設は前提として、達成不可能な治水計画はその規模を再検討し、実際に実行可能な計画とし、流域全体に対する総合的な治水策を行うとともに、河道処理能力を超える洪水に対しては樹林帯を中心として超過洪水対策を行い、越流氾濫に対して人命救助を第1に被害を最小化する治水方式、すなわち氾濫受容型の治水を行うべきと考える。これによって、川を、山と海とを結ぶ緑の回廊とすることができるであろう。その具体的対策を挙げれば以下のごとくである。

1] 流域の開発を総合的に管理し、山林を適性に育成するとともに、都市部では雨水の地下浸透や貯留によって流出抑制を行う。

2] 樹林帯(水害防備林)を主体として、越流したとしても破堤させない堤防にする。

3] 越流氾濫した水は速やかに河道還元できる工夫を講じておく。(霞堤の保全、自主決壊による氾濫流還元シミュレーションの実施)

4] 氾濫域の家屋などは高床式の水屋にし、地下室などは耐水化しておく。

5] 氾濫域の農業被害などは補償する。

6] 自動車の浸水被害が大きいので、自動車の耐水化をはかる。

7] 可能であれば、水田の減反政策と連携して適切に遊水地を配置しておく。

 

(4) 利水秩序体系の再検討

農業用水や水力発電の開発の歴史は尊重するが、その川の利用はあまりに独占的・排他的である。川の生態環境を復元し、川沿いの地域文化を再興させるために、その水利用を見なおし、取水堰から下流へ放流する維持流量を増やし、統合的な取水(合口堰)から分散的取水に切り替え、少しでも川の流量が多くなる区間を増やしてやる必要がある。特に、現在の水田の作付面積は、減反政策によって約168万haと、最盛期の約51%にまで減少しており、農業用水のあり方は再考する必要がある。

 

 

 

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