4. まとめ ―地域社会を支える技術体系の提案―
明治以降の近代的河川改修を総括するならば、近代的な産業活動や市場経済に適合するように、川と人との関わりを可能な限り分断し、専門家だけに依存した管理形態で、治水と利水目的に限定し、河川改修費や維持管理費が増大する中で、川を産業社会化してきたといえる。
しかし、20世紀も終わる時期を迎え、人々は物質的充実より精神的充足を求めるようになり、“生きがい”や“居心地の良さ”が得られる自然環境との共生を希求している。
こうした動向に応えるためには、21世紀の河川改修は川と人の関係を豊かにする方向が不可欠である。すなわち、従来のように一部の人々だけが労働として川に関わるのではなく、住民・市民、さらに企業・商店・農業・学校・行政などのあらゆる人々が、ささやかでも川に関われ、地域資源を循環活用し、維持管理費を低く押さえ、そこに誇りや生きがいを蓄積していける仕事(=川業)を可能な限り多く生み出すとともに、それを受けとめる技術体系を構築していくことが肝要である。