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海氷が形成される地域であるため、海底面の温度は-1.8℃と低温であり、短期的には融解しにくいためである。こうした永久凍土の分布も、最終氷期には現在とは異なった分布であった。北米には、現在の南極氷床に等しいローレンタイド氷床が発達し、またヨーロッパから西シベリアにはやはりフェニスカンジナビア氷床が発達していた。厚さが2000mを超える氷床下では、地盤は凍結せず、従って永久凍土は形成発達しなかった。またあまりの寒冷さ故に、植生が地表を覆うことがなく、極地砂漠となっていた地域もあった。

北極と比べて、南極氷床は氷期―後氷期での変動でも、その規模はあまり変化しなかった。こうした南北両極での、氷河・氷床と永久凍土の分布変動を表-1にまとめる。現在は、北極では永久凍土が大半を占めるが、過去には東シベリアを除いて、北極でも、氷河・氷床が全体を覆っていたことが分かる。

 

表-1 南北両極の氷河・氷床と永久凍土の分布

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こうした最終氷期の古環境が、現在のシベリア永久凍土の分布に影響している。図-2は現在のシベリア永久凍土の分布図であるが、一見して東西の分布に偏りがあることに気がつく。東西シベリアを分かっているのはエニセイ河であるが、ちょうどそこを境として、東シベリアでは南限はロシア国境を越え、中国東北部やモンゴル北部にまで達する。一方、西シベリアではオビ河流域では北緯70度近くまででようやく永久凍土が出現する。次に具体的に地点をあげて比較してみる。東シベリアのチタ(北緯52度)は年平均-2.6℃であるが、永久凍土の厚さは約100mである。同じ年平均気温であるスルグールドは北緯60度近くにありながら、永久凍土は存在しない。すなわちこうした東西の永久凍土の分布の偏りは現在の気候条件だけでは説明することが難しい。これは前述の最終氷期の氷河・氷床の影響が残っているからである。

 

 

 

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