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海洋プレートが、海溝で他のプレートの下に沈み込んで、ある深さに達すると、部分的に溶融してマグマが発生し、その上に火山が並ぶ。これが列島を形成すると島弧と呼ばれる。島弧の海溝とは反対側に窪地があり、これを背弧海盆という。背弧海盆でも熱水活動が見られ、海底熱水成鉱床が存在する。この背弧海盆の過去の熱水成鉱床が現在まで保存されたのが、黒鉱型鉱床と考えられる。日本の黒鉱型鉱床は、中新世(23.5〜5.9My)の海底火山活動に関係して生成した。これに対し、カナダやオーストラリアの盾状地には、先カンブリア時代に生成した黒鉱型鉱床と考えられる多金属(Cu-Pb-Zn)鉱床が存在し、塊状硫化物鉱床と呼ばれている。

深海底表面の堆積物上に、ジャガイモ大の黒色の団塊が存在する。鉄・マンガンの水酸化物と陸源の砕屑物を主とし、少量の自生鉱物からなるため、マンガン団塊と呼ばれる。団塊はほとんどが堆積物表面から10cm以浅に存在し、1mの深度まで入ると皆無である。この産状から、団塊が未固結の堆積物中に浮いているように見える。しかし、密度の関係からそのようなことはあり得ない(なぜならば、団塊は約2.2g/cm3で、含水堆積物は約1.5g/cm3)。4価のマンガンは難溶性であるに対し、2価のマンガンは易溶性である。このため、堆積物中に埋没したマンガン団塊中の4価のマンガンイオンは、生物遺骸の分解によって生じる還元環境で2価イオンに変わり、間隙水に溶出すると考えられている。ただし、溶解途上のマンガン団塊は未だに発見されていない。中央太平洋の北緯10°付近は特にマンガン団塊に富んでおり(図9)、「マンガン銀座」と俗称されている。

海山の山頂あるいは山腹で、水深が1000〜2500m付近がマンガン団塊と同様の物質で被覆されていることがある(図9)。この被覆物は、マンガン団塊に較べてコバルトに富むため、富コバルトクラストと呼ばれる(表4)。富コバルトクラストには、白金も濃集している。

マンガン団塊や富コバルトクラストの鉱床は、正に現在生成されつつある鉱床である。当然過去の海洋においても同様の鉱床が存在したと考えられる。しかし、海底熱水成鉱床のキースラーガー型鉱床や黒鉱型鉱床と違って、過去に生成した鉱床は発見されていない。その理由は未だに分からない。

現在生成されつつありながら、過去の鉱床が発見されていないもう1つの鉱床に、メタン水和物がある。沿岸部を除いて、海底の水温はほぼ4℃である。また、一般に海底には生物の遺骸を含む未固結の堆積物が存在する。この2つの理由により、海底下にはメタン水和物の鉱床が存在する。メタンなどの気体成分を溶解した水は、低温で気体水和物と呼ばれるシャーベット状の固体になる。この化合物は、水分子でできる籠状の構造に気体分子が取り込まれているため、構造的には包摂化合物に分類される。天然では、最初シベリアやアラスカなどの永久凍土の地下から発見された。その後、海底下の探査が進んで、世界各地の海底で、鉱床を形成するほど多量のメタン水和物層が発見された(図10)。このメタン水和物層は、ほぼ海底面に平行に発達している。つまり、海底堆積物中の等温面に沿って発達している。メタン水和物が存在するため、未固結の海底堆積物はこの部分でのみ固結している。このため、弾性波(音波)探査で反射面が現れる(図11)。この反射面は海底面に平行なため、海底相似反射(BSR: Bottom Similar Reflection)と呼ばれる。地質環境の変化によりメタン水和物層付近の温度条件が変わると、メタンはガス化して、逃散する。このため、地質時代に生成されたメタン水和物鉱床は保存されない。

 

 

 

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