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4. 化学的不均質性と鉱床の賦存位置

鉱床があるということは、地殻が不均質であるということである。地殻の平均化学組成を地殻存在度(crustal abundance)あるいはクラーク数という。それによると、地殻の主要構成元素は、多い方から、酸素(46.6%)、珪素(27.7%)、アルミニウム(8.1%)、鉄(5.0%)、カルシウム(3.6%)、ナトリウム(2.8%)、カリウム(2.6%)、マグネシウム(2.1%)である。この地殻存在度から明らかなように、地殻を構成する鉱物のほとんどは、石英を含めて珪酸塩である。そこで、火成岩は、その珪酸含有量66%、52%、45%を境に、酸性(珪長質)岩、中性岩、塩基性(苦鉄質)岩、超塩基性(超苦鉄質)岩と分けられる。この岩石の珪酸含有量と多くの元素の含有量との間に相関がある。例えば、アルカリ金属は一般に正の、鉄やマグネシウムは負の相関を示す。珪酸とニッケル(対数)も、ばらつきは大きいものの、きれいな負の直線関係を示す。ここで興味深い点は、このばらつきの大きな原因の1つが、産地による化学的特性の違いである。例えば、同じ珪酸含有量の場合、ニッケル含有量は盾状地産の岩石の方が海洋地殻産岩石より平均で2桁高い。ニッケルとコバルトはよく似た挙動をとる。このため、全地球をまとめたときの岩石化学では、正の相関が認められる。しかし、比を見ると、海洋地殻では0.16より高く、盾状地では0.16より低いという特徴も示す(図5)。

鉱物鉱床や化石燃料鉱床は、地殻中で特定の元素あるいは化合物が濃集した地球化学的に特異な場所である。このうち、鉱物鉱床から産する資源は、ほぼ自然の状態で使う土石資源(石材、骨材、砂など)、鉱物の状態まで分離して使う工業鉱物資源(耐火粘土、石灰石、岩塩など)、元素の段階まで分離して使う金属資源(金、銅、鉄など)に大別される。金属資源の場合、鉱床では、採掘対象となる元素が地殻存在度の10〜100,000倍濃集している(図6)。

20世紀の初頭、地球化学の祖、ゴールドシュミットは、元素の化学的挙動の類似性に着目して、親気元素(atmophile elements)、親石元素(lithophile elements)、親銅元素(chalcophile elements)、親鉄元素(siderophile elements)という4群を定義した(表2)。親気元素は、窒素や希ガスなどで大気に濃集している。親石元素は、アルカリやアルカリ土類元素などで、イオン的性格をもち、珪酸塩をつくりやすい。親銅元素は、銅や亜鉛などで、共有結合性を有し、硫化物をつくりやすい。親鉄元素は、金や鉄などで、単体および金属化合物あるいは酸化物をつくりやすい。このことから、土石資源は珪酸塩を主とし、金属鉱床では金が単体、鉄が酸化物、銅が硫化物を主とすることが容易に理解できる。なお、工業鉱物資源は、珪酸塩もあるが、炭酸塩や塩化物など上記以外の化合物であることも多い。

表1は鉱床の型とその生成環境の関係を示している。地質作用は、大きく火成作用、変成作用、堆積作用に分けられる。このうち、変成作用の過程で生成した鉱床は極めて稀なので、表には示していない。火成作用に関係する鉱床は、火成作用の中心であるマグマ作用に関係するマグマ成鉱床と、マグマの熱で生起された熱水活動に関係する熱水成鉱床に分けられる。表1の鉱床の型の欄で、網掛けあるいは白抜き文字で示してある鉱床は、現在の地球上でその生成過程が観察できる。その他は、過去の地質時代に生成した鉱床で、現在その生成過程を観察することはできない(砂鉄は海浜や河川で濃集過程を観察できるが、それらを鉱床として捉えるには、規模が小さすぎる)。現在生成過程が観察できる鉱床のうち、白抜き文字で示されている鉱床は、過去の地質時代にも存在したはずであるが、それを確認することはできていない。

 

 

 

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