日本財団 図書館


1. 地球の原始大気と海洋の起源・進化

宇宙は約150億年前高温高密度の状態から、ビッグバンとよばれる大爆発によってはじまったといわれている。大爆発による膨張によって温度が下がり、高温状態では生まれたり消滅したりしていた陽電子、電子、陽子、中性子から水素やヘリウムのような軽い元素がまず合成された。やがて、これらの元素が集まり星雲を形成し、銀河系をつくっていった。そして、それぞれの星雲からは無数の星が誕生した。星は最初水素の核融合によってヘリウムを合成しながら光り、次第しだいに重い元素を合成する時代を経て、最後には水素やヘリウムを燃やし尽くし、大爆発を起こして重い元素を宇宙空間に放出する。この大爆発を起こした星は超新星と呼ばれている。これらの元素は再び集まり、星雲を形成し、新しい星が誕生する。われわれの太陽系が生まれる前にこのような星の一生が何度も繰り返され、そのたびに多くの元素がつくりだされた。地球を形成している100種ほどの元素はこのような過程を経た何代かの星によってもたらされたものである。

われわれの太陽系も、約46億年前大爆発を起こした超新星からつくられた。その超新星が位置していた場所は、たまたま天の川銀河の端の方であった。巨大な爆発による激しい衝撃波はその周辺の宇宙に伝播し、星雲の中のガスや塵の密度にゆらぎを生じさせる。ゆらぎがある限界を越えると、密度の増加した部分は自分の重力を支えきれなくなって、中心に向かって静かに収縮し始める。この収縮し始めたガスや塵こそ、地球上のありとあらゆるものを構成する原子の源である。主に水素とヘリウムから構成されるこの星雲ガスが収縮して、太陽が誕生し、それをとりまく原始太陽系星雲から惑星が生まれてくる。原始地球の誕生である。

地球は直径10km程度の微惑星が衝突・合体して形成された。微惑星が原始地球に衝突すると、その運動エネルギーが解放される。そのエネルギーは、さまざまなエネルギーに変換されるが、主に熱エネルギーとして、赤外線の形で宇宙空間に放射される。微惑星の衝突速度は、原始地球が大きくなるにしたがって大きくなる。たとえば、原始地球が現在の地球の大きさの20%位のとき2〜3km/s、50%のときは5〜7km/sほどになる。微惑星の激しい衝突によって、微惑星中の蒸発しやすいガス成分が蒸発する。衝突脱ガスである。このガスこそ原始大気の素である。

原始地球の大きさが体積で現在の地球の半分位になると、衝突する微惑星の数も少なくなり、したがって地表で解放されるエネルギーも減る。また原始大気中の主成分の水蒸気はマグマの海に溶け込み減っていく。そうすると、地表の温度も次第に低下し始め、冷えてくる。地表が冷えてくると、原始大気中の水蒸気は雨となって地表に落ち、海を形成する。原始の海の誕生である。最初の雨は、地球の半径が現在の9割位の大きさのときに初めて降ったと考えられている。

原始大気の圧力が100気圧のとき、地表温度が絶対温度で650K(380℃)以下になると水蒸気が飽和して液体の水になることができる。この温度を水の臨界温度という。惑星ができる時間を5000万年、微惑星に含まれる水の含有量を0.1%と仮定し、地表で解放されるエネルギーフラックスが約160W/m2以下になると、地表温度は絶対温度で600K(330℃)に落ち着くという。つまり地表温度が臨界温度以下になり、その結果、海が形成される。水惑星の誕生である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION