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こうして得られる最悪のシナリオは図3Cである。地球温暖化によってサンゴが白化し、CO2濃度増加によってサンゴなどの石灰化が阻害される。これにローカルな人為ストレスが加わって、サンゴ礁の形成は阻害され、サンゴ礁礁嶺は21世紀の海面上昇に追いつけず水没する。

しかしこれはもっとも悲観的なシナリオであろう。一方で、サンゴ礁の成長によってサンゴ州島も維持されるというシナリオ(図3B)は、もっとも楽観的なシナリオである。実際のシナリオは悲観的・楽観的シナリオの間のどこかにあるのだろう。

科学者としてなすべきことは、サンゴ州島の維持機構についてより正確に解明し、その予測をサンゴ礁の形成過程との関係において明らかにすることである。さらに、サンゴ礁と地球環境変動、ローカルなストレスとの関係を明らかにして、サンゴ礁がこうした環境変動に対してどのように応答するか、応答を促進するためにはどのような生態工学的な手段をとりうるかを明らかにすることである。

 

3. 白保のアオサンゴ

3-1 はじめに

石垣島白保サンゴ礁では、アオサンゴが密集して分布している。白保サンゴ礁は、1980年代に空港の建設が計画され、アオサンゴはちょうど、建設予定地だった所にかかるように分布していた。当時、アオサンゴを保全するために空港建設の反対運動が起こり、空港建設は棚上げされた。反対運動では、白保のアオサンゴが世界最大・最古の群落を形成しているとされ(Planck et al., 1988)、サンゴ礁保全のシンボルともいえる存在だった。しかし、実際にはアオサンゴの分布の規模やどのように繁殖しているかなど、その生態は明らかではなかった。本章では、水惑星プロジェクトによって行ってきたアオサンゴの現在の分布とその生活史を解説する。

 

3-2 アオサンゴの群落と白化

アオサンゴは八放サンゴに属する造礁サンゴ(体内に共生藻類を持つサンゴ、以下サンゴ)である(写真1)。他のサンゴ類の骨格が白いのに対しアオサンゴの骨格は青く、そのためアオサンゴと呼ばれている。群体は半球のような形になり、枝の形状は、樹枝や円柱のように細かったり、葉や板のように平らであったりとさまざまである。アオサンゴは、白亜紀中期から出現し、生きている化石として知られている。現在は、インド―西大平洋を中心に分布している。

白保サンゴ礁は、長さ1km×幅800mの裾礁と呼ばれるタイプのサンゴ礁である(図6)。礁嶺が発達しており、その陸側にアオサンゴは分布している。アオサンゴは1m以上の大型の群体を形成し、しばしば海面にまで達し、群体の頂端面が平らに枯死し、側面に成長する“マイクロアトール”をつくる。アオサンゴの群落は、白保サンゴ礁の南側によく発達しているが、その中心部は生きているサンゴの95%以上がアオサンゴという高い割合で密集して分布している(図7)。その周辺をみると50%、5%とその割合は著しく減少する。白保サンゴ礁では、その他に岸側100m〜300m付近では塊状のハマサンゴ(Porites sp.)が、礁嶺の陸側では枝状のミドリイシ(Acropora sp.)、コモンサンゴ(Montipora sp.)やユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica)がみられる。

 

 

 

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