5.2 起潮力
潮汐は、起潮力と呼ばれる力によって引き起こされる。起潮力は、月と太陽の引力が原因であるが、月による起潮力のほうが太陽による起潮力より大きいので、ここでは、月だけを考える。図7は、地球と月を、月の軌道面に沿って見たものである。地球と月はお互いの共通重心のまわりを回転している。そのために、地球の中心(A点)では、重心のまわりの遠心力が月の反対向きに発生し、その遠心力と月の引力が釣り合っている。しかし、地球の表面では、この釣り合いが成立しない。なぜなら、遠心力は表面でも中心でも同じであるが、月の引力は、月から遠くになるほど小さくなるからである。その結果、B点では、月の引力が遠心力より大きくなって、海水は月側に引っ張られる。C点では、遠心力が月の引力より大きくなって、海水は月と反対側に引っ張られる。そのために、月側とその反対側で満潮になる、その中間地点では干潮になる。月は地球のまわりを約1月で1周するが、地球は1日1回自転しているので、海上の固定点では、1日に2回満潮と干潮を経験する。
この説明で分かりにくいのは、遠心力が場所によらない、という点であろう。また、上の説明では、共通重心のまわりの回転だけを問題にして、地球の自転に伴う遠心力には触れていない。実は、地球の自転に伴う遠心力は、地球自身の万有引力と合わせて、重力として扱われているのである。また、起潮力には、地球の自転は重要でないので、自転しない地球を考えたほうが、起潮力を考えやすい。しかし、自転しない地球はどのようにして、共通重心のまわりを回転するのであろうか。
このような問題は、模型を使うと直感的に理解できる。
5.3 潮汐の原理を示す実験
図8は、作成した模型である。地球儀の下側に白い皿のようなものがあるが、この皿は円錐状で、水を入れると、中心部分が深くなる。上からみると、水位が高くなるほど、水面は皿の外側に来るわけである。そこで、上から見たときの水面を海水の鉛直断面と考え、水面が外側に来るほど水位の高い海洋である、と考えることにする。
皿は、透明な円盤の上に固定されているが、その円盤の中心は、その下側にあるもうひとつの透明な円盤の中心から少しずれた位置に置かれている。下側の円盤の中心は、地球と月の共通重心に対応し、モーターによって、一定速度で回転する。それにつれて、皿も回転するわけであるが、皿(とその上の地球儀)は、自転しないように工夫されている。