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まず、1997年1月1日から1998年12月31日までの2年間の、毎日の、赤道に沿った東西・鉛直面内の水温分布を示す図を作成した。データは、NOAAが公開しているTAOブイの観測の数値情報であるが、欠測が多いので、周囲のデータかの内挿によって、なめらかな等温線が描けるようにした。図2は、その画面のうち、エルニーニョが発生する前と最盛期の水温分布を比較したものである。

 

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図2 赤道大平洋の表層海面水温の鉛直断面内の分布(TAOブイの観測結果による)

 

左図(1997年2月)は、通常の場合で、暖水が西大平洋に偏っている。右図(1997年11月)はエル・ニーニョの最盛期の状態で、暖水が東大平洋に張り出している。

 

3.3 エル・ニーニョ現象のメカニズムを示す実験

赤道太平洋の水温構造は、図2に示すように、低温の深海水の上に高温の表層水が重なった構造をしている。そこで、図3に示すような長方形の水槽を使い、水で希釈した牛乳(深海水のモデル)と真水を重ねて、赤道大平洋の水温分布をモデル化した。

エルニーニョ現象は、赤道太平洋西部に発達した暖水プールが崩壊して、暖水が東太平洋に張り出す現象である。暖水プールの生成は、赤道上の海面を吹く東風(貿易風)が重要な役割を果たしている。

モデル化された海面の上に風を吹かせて、暖水プール(この実験では、塩水の上に浮いた真水が暖水のモデルである)を作り、風の変化と、それによる暖水プールの崩壊過程を観察する。貿易風のモデルとして、水槽の上面にフタをし、水面とフタの間の空間を風洞と見立てて、片側に自動車用の小型クリーナーを固定し、水面に風を吹かせる。この風を貿易風と見立てて、その作用により、水面を覆った暖水が西側に集められ、暖水プールが形成する様子が観察できる。風を止めると、西側に溜まった、暖水はもとの状態にもどる。これが、自然界では、エル・ニーニョの状態に対応する。

この実験は、CS放送のサイエンス・チャンネル、及びNHK教育番組「10 Minutes Box」で放映する機会を得た。

 

4. 水面波に伴う水の動きを示す装置

4.1 海面の波

海岸に立って海を眺めれば、静かな晴れた日でも、沖から岸に向かって、休むことなく波が押し寄せている。この波は、はるか外洋に吹く風が作ったものである。

 

 

 

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