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どうも今回のセクハラに対する注意は、そのときのことを言っているようです。

Yさんはこのまま、注意を受けていただけでは自分がK子さんのお尻を触ったということを認めることだと思い、I部長とU課長に「自分はセクハラをしていない」ということをはっきりと伝えました。

しかしU課長は「過失だか、故意にだかは知りませんが、現にK子さんは泣きながら私に訴えたんです。私はK子さんの上司としても、これを見逃すわけにはいきません」と、Yさんの言い分を聴こうともしません。一方I部長は「まあ何かの勘違いかもしれないけれど、こういうご時世だから、女性からセクハラの被害にあったという訴えがあったら、仕方がないんだよ。まあ丸く収めてくれ」と、ことをあいまいにしたいという態度です。

その日、セクハラをしたとされたYさんは帰宅後、妻にこのことを話しました。妻は「そんな疑いをかけられて、黙っていることはないんじゃないの?あなたはそんなことをする人じゃないわ」と言ってくれ、Yさんは妻の理解に勇気をもちました。

そしてその二、三日後、セクハラをしたとされたことは大変に遺憾であるという抗議の文章を作り、自分の身の潔白を晴らすべく、I部長に面談する機会を得ました。その文章の内容は、「あのときの自分は左手に紙皿を、右手には缶ビールを持っていた記憶がある。とてもK子さんのお尻を触れる状況にはなかった。さらに彼女から『触ったでしょ』と言われたとき、自分は何のことだか分からず、黙っていた。それは触っていないことだと言えるのではないか。K子さんの言い分をすべて認めるのではなく、再度、K子さんからそのときの事情を聴いてほしい」というものでした。

それを読んだI部長からは「多分、Yさんはセクハラをしていないと思いますよ。

 

 

 

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