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ぜひ、会社をよくするため、会社を救うために協力していただきたい」と言われました。そのときに、相談員が余りにも「会社」「会社」というので、「会社の都合より私自身のことをもっと考えてほしい」と感じました。

さらに相談員から「あなたはどうしたいと思っているのですか」とたたみかけるように聞かれたときも、S子さんはとまどいを感じたそうです。「どうしたらいいか分からなくて相談に来ているのに」というのが彼女の正直な気持ちでした。

S子さんは結局、「あんな上司を見るのも嫌だ。明日にでも上司を異動させてほしい。自分は異動したくない」と言いました。さらに「所長には私が相談に来たことを絶対に知られないようにお願いしたい。どんな報復をされるか分からないですから」と訴えたといいます。

相談員としては「これでは具体的な対応ができない」と内心思ったようですが、こう言われてしまってもあきらめずに相手と対話を続け、相談員がさらに上の相談責任者と話し合うことや、解決のために所長の上司(部長)にこの内容を話すことを同意してもらうことが必要でした。結局このケースの場合は、S子さんが部長に直接相談するということになってしまいました。しかし、このことの結末は裏目に出ることになります。

部長はS子さんの話を聞いて大変に驚いていたそうです。部長自身は、会社が行った管理責任者に対するセクシュアル・ハラスメント防止のための研修を受けていましたから、この問題の重要性を理解はしていましたが、自分の職場で起きたということで、自分の身にも波及する問題と受け止めました。

そこで、S子さんがメモを取っていたということを聞いて、「まずはそのメモを見せてくれ」と言いました。S子さんは、それをもとに部長が所長を責めることになればどんな報復を受けるか分からないと不安に感じました。その時点ではまだ部長を完全には信頼していませんでしたので、「メモは見せられません」とS子さんは言いました。

 

 

 

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