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お客さんからも「最近、元気がないね。顔色もよくないね」と言われるようになってしまいました。

ここまで切迫した状況になってしまいましたので、S子さんは知り合いの弁護士に相談しようかとも思ったそうですが、会社に相談窓口ができたことを思い出して、ちょっと不安を持ちつつも、相談に行きました。「自分ではこの先も長く勤めたいと思っている。今の職場に異動になって、ここで頑張りたいと思っていたのに、所長から『君を生かすも殺すも』と言われ、そこまで言われてしまうのかと不安になりました。このことはだれかに話したかったが、なかなか言いにくいことで、だれにも相談できなかった。それが辛かった…」。S子さんは自分の受けていることの内容や感情を相談員につとめて冷静に話しました。

相談員から「それは放置できない問題ですね。会社全体の責任だと思います」と言われたときは、少しだけ気持ちが軽くなり、S子さんは、この相談員を信頼する気持ちになったそうです。彼女としては、上司(所長)に対する自分の接し方に足りないところがあったせいではないかということをずっと気にしていましたから、自分が責められるのではないかと考えていたのです。「所長は自信満々の態度で反省する様子が全く見られない。自分のことを仕事上の部下というよりも女性という目でしか見ていない」と彼女は話しました。

ここで、相談員から、「あなたは独身主義者なんですか?」とプライバシーに深入りした質問を受けました。「別にそういうことはありません」と答えましたが、そのとき「この相談員はこういう問題に慣れていない」とS子さんに不安がよぎりました。

相談員から続けて「相談に来てもらって本当によかった。そういう上司ならあなた以外の社員にも同じようなことをするかもしれません。以前に泣き寝入りをした女性がいるかもしれません。そういうことを防ぐためにセクシュアル・ハラスメント防止をいっそう進めなければならないと思います。

 

 

 

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