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ケース2:上司から執拗に性的言動を繰り返された事例

-某金融機関の営業所-

1 会社の体制

この会社では、改正均等法に合わせて、職場でのセクシュアルハラスメントは許さないというトップの明確な方針の下、就業規則に罰則規定を明記する、管理責任者会議などで啓蒙活動を行う、相談窓口を人事部と各事業所に設置するなど、具体的な対応策が講じられてきました。しかし、こうした取り組みにもかかわらず、自社のセクシュアルハラスメント対策が万全とは考えていませんでした。相談担当者になった人たちも、まだ相談の経験がないことに不安を抱いていました。

この会社には実に多くの職場があります。そのなかでも、末端の少人数の職場まではなかなか目が届きません。特に、そういった職場は監督者が絶対的な力をもちやすいものです。そういう人たちにセクシュアルハラスメントの正しい理解を促すためには、どうしたらいいかがこれからの課題であると考えているところでした。そこにまさに心配していた問題が起こりました。

 

2 ケースの概要と会社の対応

S子さん(36才)は勤続16年目になります。独身で両親と同居しています。今の職場に異動になったのは半年前のことです。それまでは異動が重なり、勤務地が変わるだけでなくフィールドが大きく違う仕事に変わってしまうことも多く、達成感を持って仕事をするような状況ではなかったといいます。ですから、「今度の職場ではずっと長く仕事がしたい」とS子さんは願っていました。ところが、異動になって以来上司の言動に悩み続けることになってしまいました。

この職場は所長(48才、独身)と男性3人、そして女性はS子さんだけです。男性社員は営業で外出が多く、日中は所長と二人きりになることが数多くあります。配属された当日に所長から「君を生かすも殺すも俺次第なんだ!」と言われたときには、嫌な予感がしたそうです。

 

 

 

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