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その謝罪文には「このたびはまことに申し訳ございません。深く反省しております。二度とこのようなことがないよう気を付けます」とあり、あて名と日付と署名が書いてありました。A課長は、謝罪文が鉛筆書きで、字も汚いのに気付きましたが、再度書き直すように命じたら相手が傷つくのではないかと考え、そのまま謝罪文を受け取りました。H相談員も謝罪文を見て、A課長と同じような感想を持ちましたが、そのままM子さんに手渡したということです。

M子さんはこの謝罪文を一目見て「鉛筆書きで印鑑も押されてないようなものを、いつもビジネスレターの形式などに厳しい会社がそのまま受け取ったのは、この問題を重要なことと考えていない証拠じゃないのか。こんなのでは、T課長が本当に反省しているのかどうかもあやしい」と感じました。そしてA課長の口から「今回の件は、一筆もらったからこれでいいですね。彼は将来有望視されている人材なんだ。これ以上、彼を責めて、辞めさせたくないんだ。人間的にも傷つけたくない。今後も繰り返すようなことがあれば、言ってきてください。」と言われました。

結局、M子さんは泣き寝入りと何にも変わらないと感じました。それに直属の上司であるK課長の対応に、自分の部下よりも、T課長の方が大切なんだという思いが募り、結局は何の力もない部下のことなんか親身になって考えてくれないと感じ、K課長を上司として尊敬することもできなくなりました。

さらには会社の対応にも納得できず、つまるところは、セクハラ対策なんて形だけ整えておけばいいと考えているに違いない、女性の活用なんて唱えているけれど、それは世間の風潮に合わせているだけだと感じました。

今までM子さんはこの会社で働けることを誇りに感じていましたが、今ではそれもどこかに消え、機会があればこの会社を辞めて、転職をしたいと考えています。

 

 

 

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