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そしてM子さんのタンクトップの間からT課長は手を入れて、彼女の胸をわしづかみにしました。M子さんは余りの恐怖で、「やめてください」の言葉も出ませんでした。しかしM子さんの必死の抵抗に相手も気が付いたのか、ようやく相手は力をゆるめ、我に返ったように「とんでもないことをしてしまった。ごめん」と謝ったそうです。

その晩、M子さんは一睡もできずに泣いていました。翌朝はできることなら会社を休みたいと思いましたが、翌週に控えた夏休みのこともあるので、不安ながらも会社に出るとT課長からメールが来ていました。内容は、「昨日は暑さのせいでどうかしていました。でも以前からM子さんのことが気になっていました。今後も会社内で私と会うことがあると思いますが、今までと同じように振舞ってください。また昨日の件は、どうぞご内密にお願いします。今度食事でも一緒にしましょう」というものです。

このメールを読んでM子さんは「T課長は何にも反省していない」と思いました。しかし、この問題を公にして、T課長とM子さんの上司であるK課長の中がぎくしゃくして、仕事がしづらくなってもいけないと思い、自分さえ黙っていれば、時間が解決してくれると思いました。そしてT課長が何を言ってきても、M子さんは無視することに決めました。

T課長も反省をしたのか、それから二、三日は、頻繁に訪れていたM子さんの部署に顔を出すこともありませんでした。そしてM子さんは予定どおり休暇を取得し、その後、いつもと変わらず出勤しました。

出勤してみると、またT課長からメールが届いていました。その内容は「休暇はどうでしたか。ところでM子さんはバレエは好きですか?今週の金曜日の公演のチケットがあります。一緒にいかがですか」というものでした。M子さんはT課長の誘いに応じる気はありません。また無視すればT課長も分かってくれると思い、返事を出さずにいました。すると翌日、帰宅しようとするM子さんを会社の前で、T課長が待ち伏せしていて、「このチケット、高かったんだ。無駄にするのももったいないし、一緒に行かないか?」と言われました。

 

 

 

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