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その日は、部長が地方に出張中ということもあって、課長以下、M子さん以外の部員は、6時くらいにはみんな帰宅してしまい、残業をしていたのはM子さん一人だけでした。

彼女は翌週から1週間ほど夏休みをとり、友人と一緒に海外旅行に行く計画がありましたので、どうしてもその仕事を今日中に片付けなくてはなりません。

夜8時を過ぎても、M子さんは仕事が終わりそうにありません。8時で建物内のエアコンが切られてしまうため、M子さんはその暑さのために、スーツのジャケットを脱いで、タンクトップのTシャツ姿で仕事をしていました。普段、オフィスでタンクトップだけでいることはありませんが、そのとき、その部屋にいたのはM子さん一人だったので、彼女はだれに気兼ねすることなく、ジャケットを脱いでいたのです。

そんな時、M子さんの部署に、営業第2部のT課長(42歳・男性)が突然、やってきました。

T課長は、M子さんの直属の上司であるK課長とは同期入社で親しい関係にあり、たびたびM子さんの部署を訪れることもありましたので、T課長の顔は知っているが、特に言葉を交わしたことはないという程度の関係でした。

部屋に入ってきたT課長は、M子さんに「K課長はもう帰ったのか」と質問しました。M子さんは仕事の手を休めることなく「もう帰りました」と伝えました。するとT課長がM子さんのそばに寄ってきて、「まだ仕事をしているのか。大変だねえ」と言いました。M子さんはそのときの会話をいつもの社交辞令程度に受け止め、そのままT課長は部屋を出て行くと思いました。

ところが突然、T課長が彼女に「かわいいね」といいながら背後から抱きつきました。M子さんは身をよじって、必死の思いで離れようとしましたが、相手の力が強く、放してもらうことはできませんでした。

 

 

 

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