以上、研修を進める際の注意点を述べましたが、これらはすべて研修生が安心してこの場でセクシュアル・ハラスメント、つまり性の問題を考えるための土壌づくりです。これができて初めて、研修生が自分の感じ方を素直に表現し、セクシュアル・ハラスメントの最も重要なポイントである「相手の意に反する」という部分を理解することができます。
(3) インストラクターの役割
1] インストラクターの役割
セクシュアル・ハラスメントの研修を進める際、インストラクターの役割はかなり重要になってきます。それは、研修を進める際の注意点でも述べましたが、ここで扱うテーマがセクシュアル・ハラスメントであり、人権の問題だからです。ただ単に、セクシュアル・ハラスメントについての知識を研修生に付与するだけでなく、セクシュアル・ハラスメントをしない、させない、そして被害者を救済するための知識と意識を身に付け、具体的に行動ができるように研修生を導くために、インストラクターには次の役割が求められるでしょう。
ア セクシュアル・ハラスメントとは何かを研修生に正しく理解させる
イ 「他者を不快にさせる」という主観とは何かを研修生に理解させる
ウ 人権侵害のない、セクシュアル・ハラスメントのない研修を運営する
2] インストラクターに求められる資質
では、インストラクターにはどのような資質が求められるでしょうか。
ア セクシュアリティーとジェンダーについての知識と理解がある
セクシュアル・ハラスメントが発生する原因は、男女の性別役割分業などの社会的、文化的に形成される性別であるジェンダーに対する固定的な価値観にあると言われています。