3 セクシュアル・ハラスメントの定義と範囲
前述のように、一般のマスコミではセクシュアル・ハラスメントを「性的嫌がらせ」と読み替えることが多いのですが、改正均等法21条では「職場における性的な言動に起因する問題」と定義しています。これに対し、人事院規則10-10においては、「セクシュアル・ハラスメント」と「セクシュアル・ハラスメントに起因する問題」を別個に定義した上でセクシュアル・ハラスメントを、
1] 他の者を不快にさせる職場における性的な言動
2] 職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動
と定義しています。この定義からお分かりのように、改正均等法とは異なるポイントが人事院規則に幾つか見られます。
第一に、改正均等法においては法の趣旨目的から対象を女性労働者に限定しているのに対し、人事院規則では男性も対象としていること。これは、人事院規則10-10が国家公務員法第71条(能率の根本基準)に根拠をおいているためで、職員の能率の発揮・増進を図る上では男女の区別はない、との考えに基づくものです。
第二に、改正均等法においては「職場における」ものに限定しているのに対し、人事院規則では対象となるセクシュアル・ハラスメントは、その場所・時間を限定していないこと。改正均等法でも「職場」を通常就労するオフィス等に限定せず、アフターファイブに取引先を接待し商談するための飲食店等も職場に含まれると解されますが、プライベートの宴会等はグレーゾーンで職場といえるかどうかはあいまいです。一方、人事院規則では職員間のものであれば職場外の性的言動も明確にセクシュアル・ハラスメントと位置付けています。これは、改正均等法ではセクシュアル・ハラスメント防止対策を事業主の雇用管理責任と捉えている(個々の男性労働者にセクハラを防止すべき法律上の責任はない[服務規程や就業規則等で義務づけられる可能性はある])ため、プライベートの場まで事業主の管理責任を求めることが難しいのに対し、人事院規則では個々の職員にセクシュアル・ハラスメント防止の責務を負わせており(規則第5条第1項)、より広範でフレキシブルな対策が可能となっています。