ところが大抵の場合は、静養している状況では大丈夫のようだが、仕事に戻ってみてどうかは判断できない、職場に出てみなければ、最終的な判断ができないということが多いわけです。
そこで、主治医の「職場復帰可、但し当分の間軽作業に従事させること」といった診断書が提出されることになります。
本人に「出勤してみたいが自信がない」という相談をされた場合は当然ですが、「本人がもう大丈夫です。自信があります」といっても、主治医からみて、客観的にみて本当にもう大丈夫だという保証まではできないということになると、主治医としては、このようなあいまいな表現の診断書しか書けないということになってしまいます。
問題の一つは、軽作業というのは何なのかということです。具体的にこのような仕事と書いてあれば別ですが、通常診療に従事している医師が本人の職場の状況を詳細に把握しているということは無理でしょうから、このようないい方しかないことになってしまいます。
味方であるとかないとかいういい方はおかしいのですが、直接診療に当たっている医師とすれば、できるだけ自分の患者の希望に沿ってやりたいと考えるものです。復職についていえば、少し無理かなとは思っても、本人が強く希望している時などは、仕事に出てみるのも、病気にいい影響を与えるかもしれないとも思ってみたりします。
職場に精神科嘱託医がいる場合には、職場としては、その嘱託医に意見を聞いたり、改めて復職判定についての診断を依頼することになります。この場合、患者本人の立場より職場の状況を優先するというわけではないにしても、職場の受け入れの体制を無視して本人の希望だけで、復職してもいいという判定はできませんから、判断が厳しくなる傾向は否定できません。
職場の方としては、職場に出てくるということは通常の業務に従事できるということを期待したいわけですが、特に心の病については必ずしもそうでないままに復職することも多いわけで、本人と職場の考え方についてのギャップのことは後で述べます。