少し話がそれますが、当然病気で休むについては、医師の診断書が出ているわけです。これは、ある意味では手続きの上での問題ですから、病名が何であっても、医師が静養を必要と認めればいいわけですが、後で職場復帰判定の時に、この病名のことが問題になることがあります。本人や家族としては、余り重大な病名を書いて欲しくない、実際は精神分裂病であっても、「診断書は別な病気にして欲しい」と頼まれることがよくあります。
そこで、本当の病名でない、神経症とか自律神経失調症というようなことで静養を必要とする旨の診断書が出ることが実際にはよくあります。これはよくないことだといってしまえばそれまでですが、確かに診断書を受け取った職員の方も、本人のプライバシーのため、一部の人にしか目にはふれないとしても、精神分裂病と書いてあるのと神経症とでは、かなり印象も違うでしょうし、本人や家族が気にするのも無理がないと思う点もあります。ここでは、病気の告知の問題とは別のことになります。事実このことは、精神医学、産業精神医学の上でかなりディスカッションされたことがあります。病気の本人を守るためには「ある程度の「うそ」はやむを得ない」とか、仮にそういう診断書を発行しても、「治療に従事している医師が本当の病名を承知していて治療しているのだから問題はない」のではないかという意見があって、結局はなかなかどうしたらいいのかという結論が出ないことになってしまうわけです。
ただ、職場復帰判定の際には、あらかじめ提出されていた診断書の病名が精神分裂病であるのと神経症であるのとでは、委員の判断の慎重さが違ってくるという問題は出てくるでしょう。
もう一つの点は、職場不適応というのは精神疾患であってもなくても、職場内での問題であって、心の病気全般についてもいえることですが、もう完全によくなっていて、すぐに元の仕事に戻っても大丈夫という判断−診断書の発行−ができれば何も問題はありません。もっとも仮にそうだとしてもある程度の空白期間があることは考慮しなければならないとしても。