(4) 砂浜潮間帯における底生生物の出現状況と底質諸量との関係
ここまで、相模湾沿岸における砂浜潮間帯の底生生物と底質に関する海浜勾配、粒度、COD、ILなどの諸量について調査結果を整理した。
その結果、底生生物については、砂浜によって出現する種類や量が異なること、フジノハナガイなどのように比較的近接した海岸で、多数出現することがあること、地盤高(潮位関係)によって出現種や分布量に大きな差があることなどが示された。
ここでは、海岸により出現種類数や個体数が大きく異なる要因について、底質諸量との関係を比較することによって検討を加え、今後、人工海浜の造成や海岸保全計画を策定する際に“key”となる項目を抽出することとした。
このkeyとなる項目は、人為的なコントロールが可能なものであることが望ましく、また、比較的容易に計測を行うことが出来る必要がある。このことから、比較検討する項目として、底質の粒度に関連する項目である「中央粒径」、これと深く関連する項目であるが、容易に計測が可能な「汀線付近の地形勾配」を主な指標とした。また、底生生物の餌料と関連が深い項目として、有機物量を指標する「強熱減量(IL)」と「COD」を比較の対象とした。
図4.26、図4.27に底質のIL値およびCOD値と底生生物相の指標との関係を示した。
これら有機物量を指標する諸量については、底生生物の餌料条件の観点から正の相関を期待したが、相関関係を見いだすことは難しい。これは海浜の違いによるCOD値(あるいはIL値)のばらつきが、狭い範囲に集中してしまい、誤差の中に隠されてしまっている可能性が高い。また、参考に水質条件との関係についても検討を試みた。本調査では、水質調査を行っていないため、使用したデータは自治体が各都道府県の海水浴場において毎年6月に実施している「水浴場の水質調査結果」の平成10年度の調査結果である。図4.28の水質との関係を示したが、これについても特に関連性は見て取ることができなかった。これは時期が全く異なる、調査実施日の結果であることも大きいと考えられるが、底質のCOD値よりも更に広く散乱していて、この項目については、keyとして設定することは困難と思われる。