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(3) まとめ

本項では、砂浜海岸が持つ環境保全機能について、生物との関連性が深い生物生産機能、水質浄化機能の基本的な考え方と研究の現状について整理した。

生物生産機能では、汀線付近の調査を含む底生生物相と幼稚仔魚類の調査例を主なものとして整理したが、大部分の調査例が内湾に位置する海浜を対象としたものであり、どちらかというと干潟の性格が強い海岸の調査例が多かった。

水質浄化機能では、大きく底生生物による採食に伴う浄化と海浜砂中の細菌による無機化を中心とした浄化機能の研究が進んでおり、後者についてはモデル化が行われ、一定の成果が得られている。しかし、底生生物に関する浄化能の研究は、生物生産機能と同様に内湾部を主としたものであり、外海性の砂浜における調査事例は極めて少ない。これは、水質の悪化が問題となる海域が閉鎖性の高い内湾域であるためと考えられるが、このことから、水質悪化が問題となることが少ない外海性の砂浜では砂浜の浄化機能に対する要請は少なくなると考えることができる。

 

この様に外海性の砂浜に限って、求められる機能を考えると、水質浄化機能よりも生物生産機能に関する期待が大きいものと考えられる。このことは、既存の人工海浜の環境・生物面からみた事業目的や環境・生物面に関する効果の整理結果でも示されている。幼稚仔魚類の調査例でも示されているように、砂浜汀線付近の生物相はその場の環境に適応した独自の生物相から成り立っており、先ずは外海性砂浜の生物相の実態を把握することが必要であると考えられる。

 

 

 

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