一昔前の日本の英語教育と同じだ。そのため大学に入って初めて日本語を習う学年が、基礎的な会話もできないのに高級文法なる授業を受ける羽目になる。その点中国の英語教育は素晴らしい。コミュニケーション能力の育成に重点を置いた言語教育が小学校から大学まで一貫して行われている。日本語教育も英語教育に倣って早く軌道修正する必要があろう。
教育効果の正否は大部分が教師の側にその責任があると思うが、授業、なかんずく評価(テスト)のあり方が学生の学習の仕方を決定する。文法・語法・訳読式の評価に重点を置くと、学生はもっぱらそれに沿った偏った学習をすることになる。学生の会話能力の無さを嘆く前に我々の授業・評価のあり方を改善する必要があろう。
昨年の交流会では、日本語能力試験の問題について意見が出たが、言語教育の「正しい目標・評価のあり方」の観点からみれば結論は明らかであろう。ただ、中国における日本語能力試験の関心の大きさを考えると、単に批判するだけでなく、理想的な「日本語能力試験」の実現に向けて前向きに協力したい。
63. 好評なガイド実践学習
瀋陽師範大学 761 呑山猛
新校舎の研究棟の一角に日本人教師のための研究室が与えられた。10畳程度の広さがあるので、ここに日本から寄贈された図書を置き、図書室を兼ねることにした。個別指導にも利用できるのでありがたいことと思っている。
二年目の今年は、4年生のために新たに「論文演習」を週1回持つことにした。卒業論文を書く時期になって慌てないためである。序論の書き方、本論の書き方、まとめ方等、ミニ論文を書きながら、長い論文を書くことになれることをねらっている。10月には「学生食堂に関する学生の意識」と題してグループ毎にまとめさせた。アンケートを実施し、分析、考察を加え論文としてまとめる作業である。当初困惑していたが、まとめ終えていささかの自信を持ったようだ。3年生の「作文」の授業も、2学期から「論文演習」に切り換える予定である。
総合日本語(精読)では、昨年同様ガイド実践学習を行った。資料集め、翻訳、ガイド用文章の作成、スピーチ(ガイド)の練習、観光地で実際にガイドをするという流れである。この学習は学生に好評だった。受け身の姿勢から自ら学ぼうとする姿勢づくりが今年度の私の課題でもある。
64. 芽生える“日本語の輪”
焦作工学院 730 宇高朋子
入学する学生数が年々増加しており、日本語学習者もそれにともない、増加している。赴任1年目は1クラスの人数が40名ぐらいだったのが、50名、60名、来学期教える予定の学年では、1クラス70名(3クラス=約200名)という多さだ。また毎学期の進度計画は、既に決まっており、その進度で進むよう要求されるが、その進度は速すぎ、詰め込み主義で、復習や定着させることをあまり念頭においていない事が難点だ。学生は機械系・電気系・コンピュータ系・経済管理系といった専門を持ち、日本語は教養科目として勉強しており、授業は夜間か土・日の時間割となっている。