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30. 能力テスト対策が至上命令

蘇州市職業大学 760 吉本恭子

 

ランクの低い大学と言われるが、学生の英語、特にコミュニケーション力は高い。基礎段階から使える英語を目ざして反復トレーニングを受けてきたからだと察する。同じ外国語である日本語もそのように指導されるべきと思う。

中国人教師もそのように心がけて教えているかも知れないが、学生の実態を見ると、理解、知識に偏りがちで、コミュニケーションの力は不十分だ。

赴任当初、主任にこう言われた“日本語は中国人でもう十分教えられるが発音だけはかなわぬ。能力テストのための听力(きく力)をつけてくれ”持参した聴解教材の印刷を依頼すると、学生の負担増と渋い顔、小テスト至っては、ノートをやぶいて使わせろであった。

能力テスト対策が至上命令になった。だが予算措置はないのか、「聴解対策教材を日本で買ってきて」に応じたら、私のサイフが軽くなっただけ。

多くの学生は日系企業への就職を希望しているので、会話力をつける為、会話の教科書の選定、教材(買わないだろうが)指導方法を日本人に一任せよと、同僚と具申する予定。

 

31. 意欲的な学生

太原理工大学 782 高田路子

 

太原理工大学は「理工」大学だが、学生数15,000を越える総合大学である。ここは日本語学科はないが、英語学科があり、その選択外国語として日本語課程が設けられている。私はその英語学科の3年生に第二外国語としての日本語を週1回1コマ、4年生に週1回2コマ、主に会話を教えている。3年生は9月から日本語を勉強し始めたばかりだが、大変意欲的である。しかし学生数が30名と多いので毎日いかに学生達に多くの発話の機会を与える様な活動を仕組むかで頭を悩ませている。4年生は1年間日本語を勉強してきているが文法中心の学習でコミュニケーション能力は弱い。毎回いろいろな会話の場面を与えて、少しずつ自分達の力で発話を作り出していける様にしている。

また、夜は毎日社会人の為のコースで教えている。週3回中級、週2回が初級である。中級クラスの6名は全員が社会人で、中には研修の為に日本で生活した経験のある者もいる。社会人の多くは殆ど独学で日本語を勉強してきた人達なので発音・聴解に問題がある。毎日必ず聴解の時間を設け、耳を慣れさせる様にしている。初級クラスは現在5名、うち3名は理工大の学生、2人は社会人である。特に学生は現代の日本に強い関心を持っているので日本紹介等を織り込みながら授業を進めている。

授業時間以外は、いつも教材研究、教材作りに追われている忙しい毎日ではあるが、楽しく、充実した日々でもある。

 

 

 

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