8月末始まりの学生は12月の日本語国際能力試験を学期当初から意識していて、スタート時点から日本語増強を焦る気配さえ漂う。受け持ち教科の一つの“基礎”はまさに試験準備にうってつけで、教師も一頁もおろそかにできない気分にさせられる。他の二つの“会話”も楽しく元気に、をモットーに一生懸命にやっているのだが、試験日が近づくにつれ、出席学生数が減っていき、顧客のように顔ぶれが決まった学生が出席するようになる。目的は一つ、方法は各自最良と信ずる方法を取っているのだろう。培訓部のクラス分けは、本人の日本語力の申告に基づいてなされているのだが、どうも申告が玉虫色で困る。高級クラスにいる、中、初級の実力者が、お金と時間の無駄遣いにならないかと心配になる。
中国の先生方によると、年長者はプライドもあって、クラス編成時には上級クラス志向なのだそうだ。
ともあれ、培訓部のクラスの学生数が今のままであって、増加しないことを願っている。
29. 一歩後退しても、二歩前進のつもりで
曁南大学 797 池田吉彦
華僑系の大学として、創立95周年になる由緒ある大学である。そのためというのか、経費の面で抑制されているのか、慢性的に人手不足をかこっているように見える。
学生は、内地生と朝鮮系・香港マカオ系の三分割で、内地生がやや多いという感じだ。日本語に関して言えば、朝鮮系が聞き取りも発音もかなり上手で、内地生は発音に若干の難点はあるが、4年生になると殆ど同じぐらいのレベルになる。香港マカオ系の学生にとって、日本語学習は容易ではないようだ。60代の学生もいて、格差に苦慮することもある。
現在16時間を担当していて、その半分がテキストのない授業で、毎日が資料作りに追われた時期があった。ちょうどその頃(10月末頃)に、日語試験の補講がプラスされて18時間となって、困難を極めた。労働過重を訴えたところ、来学期は12時間にするからというのであった。16時間+12時間=18で平均すると14時間になる。よって国家専家局との協定にある「週14時間(会話を含む16時間)を上限とする」の基準内なので協力して欲しいとのことであった。上限14時間の契約だから、それに従うという考えだ。
国家専家局からの指導もあって改善を約束してくれたが、既に期末試験の時期になっていて、来学期「12時間」が改善の回答であった。問題はこの「上限14時間」を改善しないことにはどうにもならない。例えば作文などは1時間が1時間ではない。書かせれば添削(日本人の作文ではない)や評価、事後指導と3倍から4倍の時間を必要とする。テキストのない授業がどれほどの労力を要するのか。ましてや会話にしても、ただ話していれば済むものでもない。「会話を含む上限16時間」はそのことを示している。これを他山の石として、今後に向け少しずつの改善をお願いしたい。その他の点では、コピーとか印刷は快く引き受けてくれるので、感謝すること大である。