尿をもらさない自信がついたことを患者さんに確認した後、4時間前後の排尿間隔を目標にして、排尿間隔を少しずつ延長することを指導します。この指導には、医師または看護婦側の根気と熱意、患者さんの尿もれに対する十分な理解がなければ成功しません。この治療法に対する成功率はおおむね70〜75%とする報告がされています(表14-1)。
治療期間としては、3-4カ月かかります。膀胱の異常収縮を抑える薬物の開発が進み(M1、M3受容体遮断薬など)、膀胱の筋肉のみを弛緩させる薬物が近日中に発売されるでしょう。
これらの膀胱の副交感神経受容体のみを遮断する薬物は、口渇、複視、便秘などの副作用を起こす頻度が少なくなり、高齢者の切迫性尿失禁に対する治療薬としてその効果が期待できます。
表14-2に示したように、この訓練法の欠点は、経過とともに再発しやすいことです。この型の尿もれのある患者さんの2年未満と2年以上との治療結果を比較してみました。2年未満群では、尿もれが改善または消失した例が20例中15例(75%)で、従来の報告と同じでした。しかし、2年以上群では19例中7例(37%)しか改善または消失がなく、時の経過とともに尿もれの再発することが統計学的にも証明されました。多分尿もれがよくなった患者さんは、多忙な日常生活のために定時排尿を守らず、以前の排尿様式に戻ったためと考えられます。
このことから、定時排尿を生活習慣の一部に組み入れてしまうように指導することがたいせつです。しかし、このようにすべてのことを理解した上で尿もれの治療を考えると堅苦しくなって、“おもらし”の治療もたいへんです。再発したときには、もう一度膀胱訓練法を行えばよいと、もっと気軽に考えて指導したほうがよいのかもしれません。
骨盤底筋訓練法にせよ膀胱訓練法にせよ、とにかく治療を始めることがたいせつです。