日本財団 図書館


次いで、呼気に合わせて引き締めていた骨盤底筋を緩めます。腟内に入れた2本の指により腟の中央部から出口にかけての収縮力を調べながら、このような運動を患者さんに指導しています。この運動ができることが確認できた後、図11に示すような運動を1日2回、10〜20分間行うように勧めています。

訓練により改善した腟括約筋の締める力を評価するために、1ヵ月ごとに腟内に入れた2本の指で緊縮度を調べて患者さんを指導しています。最初は2本の指が上下左右方向にほとんど抵抗なしに動かすことができますし、肛門括約筋を締めても腟内の指にはごくわずかな抵抗しか感じられません。しかし、1〜2ヵ月後には、最初に上下の指の動きが制限され、次いで左右に指を動かすときにかなり強い抵抗を感じるようになります。このころには、ほとんど尿もれはなくなっています。

基本的な動作は、排尿中にオシッコを中断する運動を試みることです。もしも、排尿を途中で止めることができたなら、このときの尿道や腟、肛門の締め方を覚え、原則として朝、昼、夜の20分間この運動を繰り返すように指導します。しかし、実際にはこのような時間を昼間にとることは困難なことが多いので、朝夕の就寝時と起床時に20分間、布団の中でこの運動を繰り返すことを勧めてもよいでしょう。

日本人は腟の中に異物を入れることを拒否する人が多いのですが、本当はベリネオメーターによって腟圧を測定しますと(図12、図13)、改善度が自分でわかるために、本人の励みになりますし、客観的にも指導できるので好都合なのです。尿もれは腟圧で約40mmHgに達しますと軽減し、60mmHgでほとんど消失します。このまま運動をつづけますと、80mmHgで頂点に達した後は平行となります(図14)。

この訓練期間は約3ヵ月を目標に指導しています。評価結果が思わしくないときは、手術療法に切り替えます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION