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表5 60歳以上の一般社会在住者の排尿回数

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脳死と心臓死は現代の医学では救うことができない死なのですが、心理死と社会死は医療、看護、介護によって救うことが可能な死であり、われわれ医療を担うスタッフの義務でもあるのです(並河正晃、1991)。この死を尿失禁にあてはめますと、尿失禁が生じたため社会的地位を喪失したり、社会参加も制限される、これが「社会死」ですし、尿失禁のために社会活動を行うことを自ら止め「うつ状態」に陥ることは「心理死」といえるでしょう。

聖路加国際病院泌尿器科に「最近、夜2〜3回排尿のために起きるようになった」と訴えて来院するお年寄りが増えてきました。それでは夜2〜3回トイレに起きるお年寄りは頻尿なのでしょうか。高齢になると、心・血管系機能や腎機能が低下するため、臥位姿勢になると下半身からの体液の移動が起こるためと安静状態が維持されるために夜間多尿となり、夜間起床する回数が増えてきます。私たちの60歳以上の約4,000名の調査(1990)から、夜間の排尿回数を調べた結果を表5に示しました。

この結果は夜間排尿回数の頻度で男女間に有意差がなく、たとえ夜間2回排尿のため起きたとしても、夜間頻尿が不眠の原因とならない限りは治療の必要がないこともわかりました。

 

 

 

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