日本財団 図書館


職員にとっては体験的に「3歳児神話」を払拭でき、この研修を機に職員の取り組み姿勢が次第に変容したことは大きな進歩でありました。

労働問題については、幸いにして国が昭和50年以前から、乳児3人に保育士1人の「乳児保育特別対策」の適用制度を設けており、恵まれた職員配置で週44時間労働を維持することができ、またこの「3対1」の制度があったおかげで今日まで大きな事故もなく、一貫した保育サービスを提供できたと思っています。

昭和56年、社会的反響の大きかったベビーホテル事件を背景にして施策された「延長保育サービス」は、地方自治体には子どもへの負担が大きすぎるという理由で認めてもらえず、行政の理解を取り付けるのにはかなりのエネルギーが必要でした。

延長保育が遅々として進まない事態をマスコミが察知して、連日のような報道に、ついには議会も反応せざるを得なくなりました。これは社会に根強く残っていた「3歳児神話」に地方自治体も影響されていたことに加え、乳児保育の特質である「病気に対する抵抗力がない」、「未熟性が強く、大人への依存性も強い」、「心身の発達に個人差がありすぎる」などが集団保育のリスクとして捉えられており、特に事故や病気の場合を考え、行政としては否定的にならざるを得なかったようです。

国の乳児保育に対する積極的な対策も目立つようになり、保育内容の取り組みも乳児処遇の理論も次第に確立されてきました。今日の乳児保育では社会福祉学、小児医学、心理学、小児栄養学など関連した基礎的学問の上に、集団での保育内容・保育方法・保育技術を加えて総合化されてきました。

ところが近年では、核家族化と共に男女雇用機会均等法や、女性の家事労働負担の問題、家庭における夫婦の役割分担のあり方等に加えて、家庭の養育機能も低下していることは否めません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION