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一方では、乳児をもって就労する親たちの、とにかく預かってもらえるだけでも助かるという切実な願いは、年ごとに多くなりました。このような要望が当保育所に多く寄せられ、昭和52年には、土曜日全日、年末も大晦日まで開園することにしました。

当時の保育界では、このことによって職員のいっそうの労働過重を招くとか、親の育児放棄を助長させるなど、同業者からも多く批判がありました。内部の職員からも同様の批判がありましたが、この内部批判というものは、職員自身が乳児の保育所保育を肯定する理論の裏打ちがないことや、親が仕事と偽って、本来親が果たすべき育児責任を保育所に依存している例が散見されてのことでした。

内部では、保育所保育の機能と役割について論議し、さらに保育所とは何かという原点に立ち返りました。1]保育を受ける権利を保障し、児童の処遇を高めること、2]勤務時間プラス通勤時間に見合った親の就労を保障すること、3]保育内容の向上のため、職員の研修権と労働条件を保障すること、を改めて確認しました。それぞれをすべて保障するためには困難な課題もあります。たとえば、児童の処遇を高めるには長時間保育より短時間保育が良いことは決まっています。また親の就労を保障し、児童の処遇を高めることは、ややもすると職員の労働条件を悪くするということにもなります。

このような矛盾した問題を抱えながらも、切実な乳児保育のニーズを受け止めてきました。

児童処遇の向上や業務改善については、厚生省と日本保育協会による1週間以上にもわたる乳児保育研修が設定され、このことが保育現場に役立てることができ、貴重な財産として今日でもいかされています。

 

 

 

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