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これは「人間一年早産説」から言うと本当はまだ母体の中で庇護されなければならない未熟な時期をカバーするための可愛らしさ、つまり、この未熟な幼きものを放っては置けない心情をかき立てるための神様の巧妙な策なのではないかという結論に達しました。

人間の一生の中でこの乳児期(1歳未満)は発育も発達も一番顕著な期間でもあります。一日に体重が20gから30gも増加し続けて、出生時体重の3倍まで増えるのに1年もかからないなんて、本当に驚くべき発育です。身体のどこにも力の入らなかった新生児が、1年後には歩いているというのも驚異です。運動機能の発達は中心から末梢へ(肩→肘→手首→指)、上から下へ(頭→首→肩→腰→足)、そして大きな動きから細やかな動きへと発達していくことを、保育士として現場に立った頃、繰り返し教えられました。確かに、手足をばたばた動かすだけの動きから、ふれたものにさわり、反射的に握るようになり、意識的に掴み、指先を使ってつまめるようになります。身体全体の機能発達においては、寝ていた子が首が座って、寝返りし、うつぶせから頭を持ち上げ、手を使って上体を反らせ、お座りができ、足を踏ん張り歩行の準備に向けて活発に動き出します。やがて、ひとり立っちから感動の一歩を踏み出すのです。この瞬間、まさしく人間以外の動物がこの世に生まれ出たのと同じスタートラインに立ったのです。自然界における本当の意味の誕生、自分の足で歩き、自分の手で確かめる人生の始まりともいえる瞬間です。身体の発育とともに情緒の発達は、子ども自身が自分を養護してくれる大人との関わり合いの中から学び獲得していきます。6か月未満までは生活のすべてが受動的ですが、6か月を過ぎる頃から周囲に対して積極的に反応し、働き掛け始めます。這い這いができるようになると探索行動も活発になるので、安全に十分な配慮の必要な時期でもあります。

 

 

 

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