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入園当初は、どんなに小さくても「お家と違う」事がわかるようです。十分に睡眠が取れなかったり、ミルクを飲む量が少なかったり、ちょっとした物音で不安そうに泣いたり、もちろん月齢が低ければ低いほど環境に馴染むまでの期間は短く、それぞれの生活リズムを保育者が把握し、整えてあげることも容易です。あとは、唯一の意思伝達である「泣くこと」の意味を素早く理解してあげること。初めは状況判断から。「さっきミルクを飲んだばかりだから、おなかが空いているのではないし、おむつかな? 大丈夫…お熱もないし、うんちも元気…じゃ、抱っこかな」といった具合に消去法で対応します。個性が把握できるとどうして泣いているのかがわかるようになってきます。私は、定説である「子どもは白紙で生まれてくる」に少し疑問を抱いています。というのは、どんなに小さくても持って生まれた個性は歴然としてあります。科学的に言ったらDNAなのでしょうね。同じ保育室で同じ保育士が関わり、ほぼ同じものを食べて育ったら、同じような子に育つかというと、決して同じではありません。泣き方が一番顕著にそれを表しているようです。ほやほや優しく泣く子、怒ったように頑張って泣く子、あんまり泣かない子、あやされるとすぐにご機嫌になる子、一度泣き出したらなかなか止まらない子、性格はどんなに小さくても一人として同じではなく、それぞれ別のものをしっかりと持っています。「泣き」を読んで、適切に対応すること、いわば保育士と赤ちゃんの対話、意思の伝え合いです。

どうして赤ちゃんは可愛らしいのか、皆で議論したことがありました。乳児期の赤ちゃんはおしなべて、みんな無条件に可愛らしいのです。泣いても笑っても、遊んだり食べたりしている時も、眠っている時も、もちろん甘えん坊の時も一人ひとり、みんな可愛い。

 

 

 

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