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腋のしたを支えて抱こうとすると、腋がしまらずに両手が挙がり落ちそうになる柔らかさでした。あやしても反応が少なく、表情が乏しく、ぐずりが多く、睡眠は不安定でした。

担当保育士との相互作用を大切にして保育をすすめていきました。

生後8か月でおもちゃに手を伸ばして触れるようになり、10か月では、仰向けで両手を挙げて遊ぶようになりました。しかし、両足は伸ばしきったままでした。

それまでは母親は「のんびり屋さんで…」と話していましたが、この頃になると「ゆっくり過ぎるのでは…」と不安をのぞかせ始めました。

これを機に、地区担当の保健婦に連絡をとり、保健所での発達相談に参加できる方法を相談しました。保護者の了解が得られればとの返事をもらい、母親に「保健所に相談してみませんか」と持ちかけ同意を得ました。

その後、保健所での発達相談、紹介されての大学病院受診と、看護婦も付き添いました。保健所ではカンファレンスにも参加し、A君へのよりよい対応を一緒に模索しました。保育所の看護婦が仲立ちとなったことで、保健・医療サイドにA君の普段の様子が的確に伝わり、母親にとっては、不安を和らげる手助けになったようでした。

診断は「良性の筋緊張低下症状」でした。また、発達の遅れを伴っているため、以後、地域の障害児通所施設に定期的に通い、PT・心理等の指導を受けるプログラムが組まれました。通所施設からも、PT、心理指導担当者が定期的に保育所を訪れ、保育所での働きかけ、保育する上でのポイントについて具体的な指導や助言がありました。

 

 

 

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