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かつて人手の足りなかった頃の乳児院の保育を繰り返してはならないと思います。長時間の保育所生活の中で、はっきりとした養育者が決まっていないというのは、乳児にとって甘えられる大人がいないことになり、心の安定の基地がなく不安な生活を余儀なくされます。

集団保育の場で「一人ひとりを大切にする」個別保育を実施する方法として、特定の保育者との継続的な関わりが持てる担当制を取り入れることが望まれます。この保育形態での12人の乳児と保育者4人の関わり方は、乳児12人を3人ずつ4つの小グループに分けて、1グループ3人を特定の一人の保育者が担当します。担当した保育者は、グループ3人の授乳や排泄、睡眠など日常の生活全般の世話、個人別指導計画・個人記録や保護者との連絡など全面的に責任を持ちます。入園してまもなく乳児は、自分の担任の保育者と同室にいる他の3人の保育者とを区別するようになり、担任の保育者には特別な親愛の情や甘える姿を見せてくれます。このことは、保育所生活の場に甘えられる心のより所が出来たことになり、乳児の情緒は安定していきいきと過ごし、この大人との縦の関係を軸に次第に周りの仲間関係へと広がっていきます。

乳児期のこの大人との経験は、乳児の心身の発達を助長し、人間としての大切な事柄を身につけていく基礎を培っていることを認識しなければなりません。

乳児保育は、複数担任でしかも複雑なローテーション勤務や時差出勤など、さまざまな困難な条件の中で、乳児の最善の利益を優先する保育の実践には、保育者の人間性と専門性に支えられた職員間の協力体制が求められています。

 

 

 

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