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精神的・心理的欲求の充足は“心の養護”ともいわれ、乳児の甘えたいという依存欲求を、乳児にとって当たり前のこととして受容することによって、保育者と乳児との間にアタッチメントが形成され情緒が安定します。集団保育の場であっても、乳児保育は個別保育を重視し、一人ひとりの乳児の甘えを受容する保育、それは「一人ひとりを大切にする」保育なのです。甘えを受容することは、子どものわがままを許すことではありません。甘えたい時期に十分に甘えを受容された子どもは、愛された喜びと満足感から主体的に自立への道を歩み出していくことを知っておきたいと思います。

 

c. 特定の保育者との関わりを基本にする

複数の保育者と複数の乳児が生活する集団の場で、保育者との心の絆を結ぶには、特定の保育者との関わりが不可欠なのです。保育所保育指針にも「また、特定の保育士の愛情深い関わりが、基本的な信頼関係の形成に重要であることを認識して、担当制を取り入れるなど職員の協力体制を工夫して保育する」と「保育士の姿勢と関わりの視点」(第3章 6ヵ月未満児の保育の内容)のところに記されています。

たとえば12人の乳児を4人の保育者が担当する場合、かつては4人の保育者が12人を皆で平等に博愛的に保育をすることが集団保育であるという視点から、保育者の役割をリーダー、サブリーダー、助手などを決めて、リーダーの指導の元であとの3人は助手的な立場で保育するという形態がありました。この保育形態は、クラス運営としては合理的ですが、乳児の側からいえば集団的・一斉的・管理的な対応になりやすく、一人ひとりの欲求や個人差に応じた保育は難しくなってきます。その結果、集団保育の典型的なホスピタリズムの問題が憂慮されてきます。

 

 

 

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