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特に、現代の人間関係の貧しい家庭や地域社会の中で人間として育つためには、人生の基礎時期である乳児期から豊かな温かい応答的な人間関係の中で育つことの大切さが再認識され、乳児保育の効果が認められています。今日の子育て環境で失われた人間関係を回復したり、孤独で不安な母親への子育て支援など、保育所の役割が期待され重要視されてきています。なかでも乳児保育は今後ますますその必要性と重要性が求められてくるといえましょう。今日では乳児の健全な発達にとって、家庭も保育所も必要であることを認識し、私たち保育者は、大人の利便性だけを優先するのでなく、何よりも乳児の最善の利益を考慮し、家庭と協力して乳児が日々、喜びをもって幸せに過ごせる豊かな保育を目指して励んでいくことが望まれます。

 

1. 乳児を人間として育てる

保育所は、ただ乳児を一時的に預かるだけの所ではなく、かけがえのない生命を守り“人間として育てる”という重大な責任を担っているのです。なんといっても乳児期は、人間が人間となるための基本的学習の時期であり、なくてはならない人間のこころを育む時期ですから、温かい人間関係の中で、愛と信頼によって育まれることが、何にもまして優先されなければなりません。乳児保育は“人間としての心を育む”ことが基本であり、出発点であり、目標なのです。

現代社会の心痛む事件として17歳の少年の犯罪や、実の親による子どもの虐待や殺人など、育ち損ねた哀れな人間の姿が悔やまれてなりません。子どもは、人間らしく温かい心で人間によって育てられなければ人間にまれないことを痛感させられます。

 

 

 

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