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II 心を育む乳児保育

大阪薫英女子短期大学名誉教授

こひつじ保育園園長代理

土山忠子

 

はじめに

20世紀後半の我が国の高度経済成長による工業化、近代化社会の到来、核家族化の進展、女性の社会進出の増大や就労形態の多様化、地域社会の連帯感の喪失など社会や家庭の目まぐるしい変容は、これまでの伝統的な子育ての在り方や考え方を大きく変え、『育児の社会化』が求められるようになりました。今日では、むしろ家庭養育機能の低下とか母性愛の喪失、育児不安などが指摘され、現に実父母による虐待など増加の傾向が報じられ、『家庭は子育ての最良の場』といえなくなり、“子育ての危機”“子どもの危機”が憂慮されています。

このような状況下で保育所は、保育に欠ける子ども達の保育を中心に子育てと就労の両立を支援する重要な役割を担ってきました。なかでも乳児保育への切実な要望の対応に迫られました。しかし、乳児を保育所で保育するなど、かつての子育てでは考えられないことでした。まして産休明け保育などとんでもないことで「赤ちゃんがかわいそう…」とか、「薄情な母親…」「今時の親は…」など、冷たい批判が浴びせられ、乳児保育は子どもにとっては『必要悪的存在』といわれ、“母親よ家庭に帰れ”という声さえ聴かれた時代がありました。

しかしながら乳児保育が必要悪といわれたのは過去のことであり、今日では乳児保育へのニーズがどんどん高まり、とうとう乳児保育の一般化の時代を迎えています。

 

 

 

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