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第1章 事業の概要

 

1.1 事業の背景と目的

近年、世界各地で異常気象が頻発しており、これに起因する災害、被害も次第に顕著なものとなっている。こうした災害の防止・軽減には、気候予知(異常気象予測)技術の確立が緊急の課題となっているが、これには気候変動に多大の影響を及ぼす海洋状況を、全世界的に把握することが極めて重要であり、全球規模での海況の監視、エル・ニーニョ現象等に代表される海洋現象の理解、予測が不可欠である。

これに必要となる全球規模での海洋観測の充実のためには、世界各国において、産・官・学が一体となって海洋観測網の整備、拡充に努めねばならない。現在、そのような海洋観測網の整備、拡充計画として有効なものに、日本、米国、カナダ、オーストラリア、フランスなどが協力して実施を計画しているArgo計画*があり、この推進・実施が今後の気候予知に極めて重要なものになると考えられる。当該計画では多数の中層フロートを世界中の海洋に展開することを予定しており、国際的な協力が不可欠で、とくに島しょ国、沿岸国の十分な理解と協力を得ることが重要である。

このため、まず世界の島しょ国や沿岸国、並びに我が国の海洋または気象関係機関、海洋事業関係者(商船運航事業者)に気候予知のための海洋観測の重要性をアピールするとともに、海洋観測の促進に向けた課題に対する調査を行う。その結果を集約し、国内外の海洋専門家に提供するとともに、当該調査結果を検討素材として海洋観測促進に向けた方策を検討するための国際会議を開催する。その会議の成果は「東京Argoステートメント」としてとりまとめ、報道機関、インターネット等を通じて世界に公開する。また、的確な気候予知のためには海洋観測の促進が重要であること、それにはArgo計画等の全球海洋観測網の確立が不可欠であることを広くアピールするための講演会を開催する。

*:全世界中層フロート観測網。フロートが浮沈を繰り返しながら海中を漂い、水温、塩分濃度等を測定する。(付録-1参照)

 

1.2 事業の概要

(1) 事業計画の内容

1] アンケート調査

世界の島しょ国及び沿岸国、並びに国内の海洋関係機関と海洋事業関係者に対して、自国または自機関(事業者)における海洋観測の現状と今後の課題に関するアンケート調査(郵送調査)を行う。同時にArgo計画を説明し、当該計画に対する協力、支援の可能性に関する意見を調査する。

実施時期 平成12年6月〜8月

対象 国内200箇所程度 国外50箇所程度

調査 回収アンケートによる集計、解析

 

2] 全球海洋観測推進に向けた国際検討会議の開催

国内外の専門家を招聘し、上記調査の集約結果を素材として、今後の全球海洋観測推進体制の確立に向けた課題とその取り組み、特に民間の協力体制のあり方に関する国際検討会議を開催する。

 

 

 

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