(2) 傾度風+一般風モデル
台風周辺の気圧分布として、Schloemerの式(4.4)を適用する。次いで、地表面摩擦を考えず、台風は静止状態にあると仮定すると(5.8)式のような傾度風バランスが考えられる。(4.4)、(5.8)より、傾度風速が(5.9)式で表される。傾度風速から台風域内の地表風V1は、次式で計算される。
V1=c1×Vg
c1=0.6〜0.7 (6.6)
β=30°
ここで、c1は経験的な定数、βは吹き込み角である。また、台風の移動に伴う一般風V2は台風の移動速度Cに比例し、距離と共に指数関数的に減衰して中心から500km離れたところでexp(-π)とする。

ここで、c2は経験的な定数であり、風向は台風の進行方向と同一とする。以上により、地表風Vsは、V1とV2をベクトル合成することにより求まり、この台風の移動に伴う風の合成により台風中心に対し非対称な風速分布が得られる。
(3) 新たに作成したモデル
衛星データによる台風域内の海上風分布(第2章)を基に、新たなモデル海上風を作成した。詳細は第5章参照。
(4) 各モデル台風の一例
各モデルの比較一例を図6.2に示す。図中の、左側が風速分布図、右側が風向分布図であり、上から順に、光田・藤井モデル、傾度風+一般風モデル、新たに作成したモデルの計算結果である。図には台風中心から200kmまでの風の分布を示している。計算条件は以下のとおりである。
台風の中心気圧:940 hPa
台風の気圧深度: 70 hPa
最大風速半径 : 60 km
台風の進行速度: 40 km/h