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第5章 衛星観測に基づいた台風域内のモデル海上風

 

本章では、第2章で述べた衛星観測データから得られた海上風の分布特性を踏まえて、台風域内の海上風を表現する経験式を作成する。

 

5.1 台風域内の海上風速分布を表わす経験式

 

衛星観測データによると、台風域内の最大風速は台風進行方向の右側に現れることが示された(図2.8)。この特徴を定量的に調べるため、風速偏差の断面図を図5.1に示す。風速偏差は台風中心から等距離の同心円における平均風速からの偏差と定義する。この図は最大風速と最小風速が現れた方位の風速偏差の断面を示す。台風の進行速度が10km/h以下、11-24km/h、25km/h以上の三種に分類してある。

図5.1から分かることは、風速の最大偏差は約2.5m/sであり、進行方向の右方向、中心から175〜275km付近に現れる。その分布形状は誤差関数、またはレイリー分布関数等で近似できるようである。マイナスの偏差分布は、近似的にプラスの偏差を0軸で折り返した様な分布をする。風速偏差は台風の進行速度と大きな相関が無いようである。

次に台風の進行速度別に、16方位の風速分布を図5.2〜5.4に示す。これによると、中心から0-50kmの風速を除いて見ると、全ての距離の風速はきれいな正弦曲線を描いている。0-50kmの値が不安定な形を示すのは、統計誤差によるものと推定される。

図5.2〜5.4によると、最大風速が現れる方向は、10km/h以下の場合では112.5〜135°の方向であり、11-24km/hと25km/h以上の場合は、90°つまり進行方向の右方向に現れることがわかる。

これらの結果は、台風域内の風速は傾度風と一般風の合成で成り立つとする従来の考えでは説明がつかないことである。そこで、この風速分布の特徴を表現するため、次の経験式を作成した。

 

 

 

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