法的な枠組みでは、STSの提供に関する条項は、社会福祉法(Social Welfare Act)から削除され、STS法が設けられた。STSの位置付けが、福祉の措置的な枠組みから、市民生活に欠かせない移動(交通)の問題へと転換を遂げたことになる。
STSは地方自治体ごとに提供されるサービスであるが、行政界を越えるトリップについては、特別な理由があれば認められる。教育、通勤などはそれにあたる。こうしたトリップには国のSTS (NTSという)が提供されることになる。NTSは全国で22,000人の有資格者がおり、年間約90,000回の利用がある。費用は年間1億Skrかかっている。

自治体関係者の中には、人口密度が極端に低い地域が多いことから、利便性の高いSTSが重宝がられ、サービスが普及し過ぎたという認識がある。そのため公共交通機関の整備が遅れてしまったという見方もなされている。現在はその状態を転換しようとしているところである。
全般的な状況を見ると、現在タクシー事業者の売り上げの半分は、STS事業を自治体から受託することにより賄われており、STSの動向は社会に大きく影響を与えるものと考えられる。
2] ストックホルム県のSTS
a. システムの概要
ストックホルムでSTSが開始されたのは1967年である。
ストックホルム県の有資格者は約8.5万人(人口の約4.7%)である。車両はタクシー車両がおよそ3,000台、リフト付きなどの特別車両(図5-4-3-2、写真左・中)がおよそ300台である。特別車両を必要とするのは、有資格者8.5万人のうち、およそ1.6万人である。ストックホルム県内では、約20地区の予約センターに分割されており、13〜14のタクシー事業者等が関与して運行されている。
平均的な利用者像は、年齢76歳で、女性が多いとのことである。
b. 運賃
1回利用あたりの個人負担は50Skrである。ただし、一ヶ月あたりの最高支払額は270Skrまででよいことになっており、月間270Skrを超える利用者負担はない。