日本財団 図書館


聞えないことにより、言葉をうまく発音できない障害を伴うことがあります。そのため、お客さまの言うことがうまく聞き取れないことがあります。また、聴覚障害という認識がなくても、高齢になり耳が聞えにくくなっている人もいます。

聴覚に障害のあるお客さまは、公共交通機関を利用するときに、駅の案内放送、発車ベル、車内放送などが聞えず困難を感じています。電光掲示装置や何らかの視覚的な表示機器がない駅や車内では、常に不便な思いをしているのです。初めて乗る電車やバス、初めて行く場所では、居眠りをしてしまった時や、下車駅(停留所)の確認ができない時に不安を感じています。アナウンスが聞き取れない、車内に電光掲示装置がないなどの状況では、外を見たり、駅名、停留所名表示に常に注意しなければならず、落ち着くことができません。列車の接近音、発車合図が聞えないことにより、列車に接触しそうになったり、ドアに挟まれそうになったり、危険な思いをすることがあります。

聴覚や言語に障害のあるお客さまに接する時は、窓口や案内時におけるコミュニケーションの取り方の基本を修得することが大切です。話しかける時の基本、効果的な筆談の方法、簡単な手話などが役立ちます。

何か尋ねられても言語に障害を持つお客さまの場合、こちらがうまく聞き取れないことがあります。質問内容をあいまいにしたまま答えるのではなく、復唱確認するなど、誤解のないように配慮します。どうしても聞き取れない時は筆談を提案してみたり、乗り換え案内ならば路線図を利用するなど臨機応変に対応してみましょう。こちらの言うことが相手にうまく伝わらない時も同様の工夫をしてみましょう。

 

7] 高齢のお客さま

高齢のお客さまは、身体機能が全般的に低下しているため、明らかに特定の障害を持つ場合以外は、外見上顕著な特徴が見られないこともあります。しかし、程度は軽くても様々な障害を複合的に持っている可能性があり、移動全般に、身体的・心理的負担を感じていることが多いのです。いっぽうで、元気な高齢の方もいますので、程度に個人差があるのは当然です。しかし、一般的には移動と情報提供の両面での介助が必要になると考えられます。

例えば、これまで述べてきたような障害と関連付けて考えると、耳が遠くなるということは聴覚障害の一部と考えることができ、白内障で視力が低下することは、視覚障害の一部ということができます。

心理面では、健常者でも体調が悪い時には公共交通機関を使って移動するのが負担に感じるように、体力全体が低下している高齢の方は、機敏な動きや、連続した歩行などに自信がなくなり(また、実際に困難になり)、精神面でも気力が低下してくることが多く見られます。それだけに、外見上健康そうでも、高齢のお客さまは、移動の際の身体的・精神的負担が大きく、公共交通機関を利用した移動に不安を感じていることが多いのが実態です。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION