弱視のお客さまの場合、周囲の明るさや対象物のコントラスト等の状況によって、同じ物でも見え方が異なる場合があります。「1人で歩いているから切符も買えるはずだ」とか、逆に「視力に障害があるから一部始終介助しなければならない」という断定は禁物です。お客さまのニーズ、状況に応じて必要な介助を提供する必要があります。
視覚に障害のある人が、公共交通機関を利用したり外出する時は、目的地への道順、目標物などを事前に学習してから出かけることが一般的です。しかし、日によって屋外空間の状況は変化します。天候、人の流れ、不意な工事の実施など、いつもと違う環境に遭遇することもしばしばです。また、急に初めての場所に出かける必要に迫られることもあります。単独歩行に慣れている人でも、こうした状況の変化は緊張を強いられ、ともすれば思わぬ危険に遭遇することもあります。場所、方向、階段や出入口の位置、現在位置が分からないときは特に不安を感じます。駅周辺の放置自転車や、コンコースに出店している売店なども注意しなければぶつかってしまいます。
また、毎日の通勤や通学のためにも、切符の購入などはできるだけ1人で行いたいと希望する人も多くいます。質問されたら何でも代わりに「してあげる」のではなく、お客さまが希望した場合は、今後のために使い方を的確に案内することも必要です。
ラッシュ時は、単独歩行に慣れている人でも、人混みで乗降口の様子がわからず、乗るタイミングをはかるのが困難です。また、混雑したホームを通行するのに、危険な思いをしながらホームの縁を歩かなければならないこともあります。常に転落の危険、列車との接触の危険を体感しながら移動しています。単独歩行をしている視覚に障害のある人のうち、ホームからの転落経験のある人は6割とも7割ともいわれています。過去に何度も転落を経験した人も少なくありません。
視覚に障害のあるお客さまは、誘導ブロックや適切な音声による案内を必要としています。要所への点字案内の設置や、改札、階段などの主要物の位置案内が必要です。駅構内では、階段や出口、ホームで下りた時にどちらへ進んだらよいかわからず、困難を感じています。トイレに案内するときは、入口まででいいのか、中の様子を案内する必要があるか確認することが大切です。
6] 聴覚・言語に障害のあるお客さま
聴覚や言語に障害のあるお客さまは、コミュニケーションをとる段階になって、初めてその障害に気がつくことが多く、普段は見かけ上わかりにくいものです。聴覚の障害も個人差が大きく、失聴した年齢、聞えのレベル、教育歴、成育環境等により障害の程度が異なります。特に乳幼児期に聞えないと言葉の修得が困難になるため、コミュニケーションが十分に行えない場合があります。聞えるレベルにより、補聴器や裸耳でも会話可能な人もいますが、周囲の雑音の状況、補聴器の具合、複数の人と会話する時など、うまく聞き取れないこともあります。